8.
   ほら、俺の目に狂いはなかっただろう?
   1年生を中心とした試合、力を発揮できずに降格されそうになった影の子。どうすればあの子がこの危機を脱することが出来るのか。考えろ考えろ、いつもはもっと回るはずの頭がちゃんと働いてない気がする。冷静になれていないのは、あの子だけじゃなく俺もなのかもしれない。
   思い出すのは、初めての試合、ヤル気に満ちながらも緊張に支配された強張った表情。元々ポーカーフェイスの黒子君の顔から、いつもより焦りや不安が見て取れた。表情豊かな人間が、目立たない訳がない。そうだ、
「消せ、感情も表情も消せ。そうすれば、キミは見えなくなる」
俺にしか、見えなくなるんだ。
   共に戦う仲間へ素早く力強いパスを繋ぎ、どうにか勝利を手繰り寄せた黒子テツヤ。帝光中学バスケ部の唯一無二のシックスマン。はじめて自分の手で掴んだ勝利に喜ぶ、その心からの笑顔が、
「……赤司君、キミの言葉のおかげです」
とても、いとおしい。
そう思っていいのは、黒子テツヤを見出した俺だけだ。
あの子を見出したのは、僕 / 愛おしむ心の権利、独占