分かるから貴方のことを、 | ナノ
※少ネタバレ


「おわあっ!」
「ありがとよ」
「さてよ、」

電気も付いていない暗い部屋でながれている声には聞き覚えがあった。まあ、聞き覚えというよりは、いつも聞いている声。正に自分の声である訳で。 逆に驚きを隠せなかった。この部屋とは、折原 臨也の…ノミ蟲野郎の住まいの一室なのだが、どうにもテレビに夢中らしく俺が家に入ってきたことにも気付いていないようだった。

「おい、何してんだ手前はよお」

一つ声をかける。臨也の奴を大嫌いな訳だが、無断で入るほど常識はずれじゃない。この部屋に入った瞬間に、俺のこの間戦っていた姿が映っているテレビに、苛ついたのもきっと嘘じゃないだろう。臨也はと言えば、こちらに顔を向ける訳でもなく只、ぼーっと無心で眺めているだけだった。おい、聞いてんのかよ。と口に出そうと思えば、

「ねえ、この笑顔。見たことないんだけど?」

臨也の声は普段よりも幾分か低いトーンだった。何に不機嫌なのかはよくわからねえ。意味がわからねえしな。

「ああ、そりゃあ。何で手前に笑顔を向けなくちゃならねえんだよ。それとだ、その動画は何なんだよ」

怪訝そうな顔をして臨也を見る。臨也の方は、テーブルに肘を突きながら指先でこんこんとテーブルを叩いている。うるせえよとは思っても、臨也の話をかけるなというオーラは初めて感じた。あー、何だよ。

「あ、静ちゃん。これセクハラじゃない?身体触りすぎだよ、これ一応女じゃん。あっ、今のところ静ちゃん尻触られてたでしょ。何、これ。戦ってんの、セクハラしてんの、されてんのどっちだよ。」
「どれもちげーし、何に腹を立たせてんだよ。」

本当に、危なかったなあ。あ、顔踏んでたら滑ったんだよな。運動不足なんだろうなあ、多分。タバコ控えたら良いかな、いやまあ良いか。
というか、何気なく音量上げんじゃねえよ。別に自分が好きな奴じゃねえんだからよ。

「まあ、どうでも良いけど。さあさあ、俺の隣に来なよ一緒に見ようか」

どうでも良くないだろうが。と尋ねたいような顔をしているがここはスルーしようと思い癪だが臨也の隣に向かう。
「いや、見ねえよ。」
この否定は大事だよな、と思いながら臨也が俺の場所にと開けてくれたソファーに座る。あー、何かこう。自分を見ていると無性に恥ずかしくなるよな。それに、何で臨也の奴は俺なんかのビデオを見てやがる?、その前に何故録ってあるんだ?一つ疑問に思えばまた、別の疑問が浮かんできた。それでも、疑問なんか抱えていたところで何も変わりはしねえし、まあ良いか。

「あ、このとき俺のこと考えてたよね、」

不意に臨也が赤面した顔を隠すように、手を頬に当てていた。何で、手前のこと考えてたのを見ただけでわかるんだよ、と少々気味悪く思いながらも、

「何でわかるんだよ」
そう答える。別に、恋関連で考えていた訳でもなく、只…そう、浮かんだだけだ。俺の力を人が恐れることは知っている。それよりも恐いことは、きっと自分の力が制御出来ずに殺してしまうことだと思う。好きな奴を殴りたくなくても抑えられない感情で危害を加えてしまう。それなら、俺はどうやったら死ぬのかとか、そんなことをここ最近は考えていた。

「そりゃあ静ちゃんのことだから」

こいつは、何回殺そうとしても死ぬ気配が見られない。死にたくないというこいつからくる意思表示のようなこの顔を理解しているから殺せないのか。まあ、どんな奴にこいつを殺せるのかは知らねえが、臨也の奴は、俺が除去するんだよな。
そんなことを思いながら、臨也の首に絡み付く。まるで、愛を確かめる恋人達のように。

少し驚いた顔をしてから、静ちゃんから抱きついてくるの、久しぶりだねえ。と俺の頭を撫でながら言っていた臨也を眼に焼き付けながら、眠った。


分かるから貴方のことを、/0510


(うわ、静ちゃん寝てる。あ、睫毛長いな。おーい、起きないと襲うぞー、縛るよー…聞こえてないな)

end


*****
甘い臨静を書いてみました。臨静は、微甘が良いですね。というよりも、歪み合っていて、両片想いな周りに迷惑がかかる関係が良いと再確認しました。
あ、普段の小説の更新を楽しみにされていた方、すみません。甘いです、甘い…
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