結局喧嘩 | ナノ




嗚呼、また来た。あいつが来てしまった。
久し振りに池袋に訪れれば、苛立ちを隠し切れていない「池袋の自動喧嘩人形」が、棒立ちをしながら立っていた。

「なあんで、てめえがここにいるんだよ。いーざーやァーくーん」
ああ、怒っている顔をしているように周りは捉えるだろうが、多分この顔は久しぶりに俺に会えて嬉しいという顔だな。
これまでに、人間観察をたくさんしてきた自分には自信が持てる。

「あはは、静ちゃんご機嫌だね、そんなに俺が来て嬉しいのかな」

平和島静雄、どこがどう、平和で静かなんだと聞きたいが、所詮はただの名前。
そんなの気にすることはない。
人間愛を語る俺には、名前なんてどうでも良いから。俺が、興味を示すのは人間の生体だから。

「だあれが、嬉しいっていったかよ。手前の頭は本当に可笑しくなってるみたいだな、ノミ蟲野郎」
何だかんだ言っても、表情を見ていると普段よりか口角上がっている気がするのは俺の気のせいなのかなと静ちゃんに尋ねれば、

「気のせいだ!」
なんて、即答するので、つまらなかった。そんなドスの効いた声で怒らなくてもいいのに。
俺が、あー言えば、こー言う静ちゃんを見ていると腹が立つ。
静ちゃんは、よく「俺を一番イラつかせられるのは手前くれえだ!」と言うが、俺をここまで苛立たせる人も静ちゃんだけのような気がする。
あ、人じゃなかった。化物だよ、化物。まず、人間だと思いたくないからね…


ブンッ ガッシャアン!


そんな事ばかり考えていたら、コンビニの塵箱が飛んできてしまって、避けるのが遅れる。
人が考え事しているなんて予想はしないのか、こいつは。と突っ込もうとしたが、これ以上怒らせると本当に命が危険なので止める。

「った!酷いな、静ちゃん。」

そう、考えた後に、自分でも分かるような不敵な笑みを浮かべてナイフを手に持つ。
「見逃してよ、静ちゃん…」
「うっせえ!」

嗚呼、再び始まるこの喧嘩。


結局は喧嘩/0201(0328)
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