色濃いハナミズキ | ナノ
臨也と静雄

月日が経つにつれ、この思いも強くなる。
「はあ、何でだろうなあ」
臨也は、独り言を呟く、
「何、言ってんだ、手前?」
この部屋には、臨也しか居ない筈なのに聞き慣れた声が自分の耳に聞こえてくる。
声がした方向を見ると、
「うげ、静ちゃん…」
今、臨也が脳内で考えていた張本人の静雄が立っていた。
今は、会いたくなかったんだけどな、という感情を露にして見たのだが、鈍い静雄にとってみれば、ただ不機嫌なだけと捉えられたのかもしれない。
「勝手に、入った。」
一言二言しか喋ろうとしない静雄に、何も苛立ちを感じなかった。それに、勝手に家に入ったからと言っても、怒る気もしなかった。寧ろ、喜んで迎えているのかもしれないなあと臨也は静雄を見て思った。
「おい、手前。さっきの独り言なんだったんだ?」
静雄は、臨也を気に掛けてくれていた。だが、臨也が考えたことは、一つ。
俺が普段とは異なった表情での独り言に弱みを握れると思ったのだろう、だから俺の独り言の内容を聞いて来るんだ。
そう、考える度に、ズキッ―と、心が痛くなってしまう。臨也は、相手に気付かれてしまわないように、そう思うしかなかった。
「…何でもないよ。静ちゃんの気にすることじゃない。」
静雄にこんなにも分かりやすい嘘をつくなど今までしたことが無かった気がする。
でも、この思いを伝えれば、静ちゃんが自分から離れてしまうと臨也は、考える。
「手前、そんなに嘘下手だったけか?」
鈍いと周りからよく言われる自分にでも分かってしまう切れが無い臨也の嘘に驚く静雄を見て、
「嘘はついてない、はず。」
でも、この思いは言う訳にはいかないんだよね、臨也はそう思いながら再び静雄に嘘をつく。
「、そうか。別にどうでも良いが、その…その面はやく止めろ。胸糞悪ぃ」
その面って、どんな面だ!とでかい声で叫びたかった。
「それとだ、手前はもう少し 人を信用した方がいいと思う、俺が言うのも何だけどよ」
珍しく静雄が臨也を心配した。静雄にとってみれば、心の底から心配していた。あの、臨也がその悲しそうな可哀想な面で独り言を言っていた。
臨也は、静雄の気持ちに気付かない。
「煩い。静ちゃんなんかに、言われたくないし。それに…」
静雄は、臨也の言葉を聞いて、胸が苦しくなるのが分かった。
でも、今ここで問い詰めなくてはならない気がしたので静雄は再び聞く。
「なら、何故言わない。俺を信用しろ!なんて、無理強いはしねえが、どうせ俺絡みだろ?」
静雄の放った言葉を聞いて、臨也は少し驚いた。
自分が先ほどまで考えていたことは、仕事のことでも大好きな人間のことでもなく
平和島静雄 今、自分の目の前にいる一人だけのことを考えていたから。
「静ちゃんは、受け取らない。絶対に受け取らないんだ。」
「は?何を言ってんだよ、しかも何で手前が勝手に決めてんだよ。」
静雄は、臨也を見て、思う。
自分は、臨也や新羅のように頭が言い訳でもない。それでも、臨也のことを好きだと思ってしまった自分には聞いてやることしか出来ないのではないのか。
静雄が、いろいろと考えている中、臨也は言葉を放つ。
「静ちゃんはさ、俺に好きな人が出来たらどうする?」
これは、賭けだった。静ちゃんが怒るか応援してくるか、どうでも良いという素っ気無い態度をとるか。
色々と考えていた。
「…」
何の表情も無く、普段通りの表情である静雄に臨也は再び胸が苦しくなる。
ああ、静ちゃんは俺のことなんとも思っていなかった。
少しは、怒るとか。驚くとかしてくれても良いんじゃないかなと考えているあたりもう自分の脳みそは腐ってしまったのだろうかと臨也は考えた。
「俺はよお、何も言わないつもりでいた。手前が何しようと、何処に行こうとしても。だけど、今は言わなきゃいけねえ気がするから言う。」
「あ…ちょっと待ってよ、静ちゃん。」
静雄が言うか言わないか少し考えていると臨也が口を挟んできた。
何かを取りに行った臨也は静雄を残して、台所に向かった。
タッタッタ―
臨也が何かを持ってくる。
あれは、…やべえ花とかよく知らねえんだよな。何だ、あれ。静雄がそう考えていると、
「ハナミズキ。花言葉は、私の思いを受けて下さいということなんで、静ちゃん。好きだよ」
臨也が喋った途端に、空気が軽くなったと感じた瞬間に、何か違う感覚に襲われる。
静雄は、臨也に、すきだと伝えたかった。
それを、臨也に言われたことで、頭が混乱している。本当に、言おうと思っていなかったことなので、頭の回転が全く追いつかなかった。
先ほどまで、悲しそうな顔をしていた臨也が今は、何かを吹っ切れたような顔をしている。
「いやあ、静ちゃんにハナミズキを贈ろうとしてたんだけど、全く渡す意味が分からなくなって困ってたんだよね。」
「…俺、に?」
「いらないなら、無理して受け取ることないけど?」
「いや、もらう。」
このようなやりとりをしながら、静雄と臨也は付き合うことになった。
この記念日の日には、どちらも花を買ってくる。ハナミズキの花を。
「私の思いを受けて下さい」
と思いながら。
「ねえ静ちゃん。」
「ああ?」
「何で、あのとき ハナミズキあげたんだろうね」
「知らねえよ。」
「まあ、いっか。好きだよ」
「…俺も」



色濃いハナミズキ/0308


ことぶさ様、こんなのですいません!
相互ありがとうございます!これからも宜しくお願いしますね^^
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