卒業式より得る | ナノ
※学生時代



ひらりひらりと散り逝く桜の花をじーっと見ながら、考える。
嗚呼、この花たちのように自分たちも散ってしまうときが来るのか、と。
離れたくないバラバラになりたくない。こんな強い気持ちを持っていても時間は
どんどんと経って行く。
愛しい相手との時間や友人との時間、苦手だった教科の退屈な時間。全てが自分
の人生から過ぎ去ってしまう。後戻りも出来ない、ただただ流れ行く時間と共に
生きていくしか出来ない。
「幼児並の頭で考えことをしても何も解決できないだろ、しずちゃん」

何も考えずにただ、桜の花が散るところを見ていた。まあ、思ったことはあった
が特に考えることは無かった。
「何も考えちゃいねえよ、ていうか死ね。とりあえず死ね」
「アハハ、俺の顔をみれば、死ねだの殺すだの本当に芸がない台詞だね」
嫌味なことを言う手前も芸がねえよ。
等と思ったが、桜という花を自分の手で散らせたくはなかったので抑えるよう努力をした。
この桜はこの季節に咲いて直ぐに散ってしまう。なんともまあ、儚い花だとは思う。
ただ、それよりも、本当に綺麗な花だと同時に思うのがこの花の魅力なのだろう。
他の人はどう思いながらこの花をみているのだろうか。何を考えどんな瞳でみているのだろうか。
ふと、自分らしくはない考えが浮かび上がってきた。
「なあ、臨也。手前は桜をどう思う?」

「桜、ねえ。俺は、馬鹿らしくて興味ないね。儚く散り逝く花を気にも留めているだけで時間の無駄。
まあ、何処かの誰かが言っていた儚く散り逝くのは人間の夢だとも言うという考えは凄く興味があるけど。…急にどうしたんだ、静ちゃんらしくないねえ」

ああ、やっはりこいつもらしくねえと思ったか、と考えていれば、

「あのさあ、聞いといて返答をしないとか失礼じゃないのかな、静ちゃん」

「ああ、今日は俺が聞いたんだよな、悪ぃ」

ああ、考え事なんかしていたせいで、普通に謝ってしまったじゃないか。

「…まあどうでも良いけど。何かあった?」

珍しく俺に心配そうな表情を見せる臨也に、俺にでも心配してくれんだな。と返せば、はっ心配じゃないし馬鹿じゃないの?と答えてきた。
何故だろう。こいつの言っていた人の夢は儚いという言葉が頭にバックアップされている、気がする。
あいつにも夢というものがあるのだろうか。まあ、きっと純粋無垢のような夢ではないということだけは分かるのだが。

「手前の夢はなんだ?」
「別に何も無いよ。お金が手に入れば普通に暮らせるからね、まあしいて言うと人間観察が俺の夢かな、全人類を愛すべきだと思うんだよね」

何故か、悲しそうで、遠くを見つめている瞳で臨也は言った。

「俺は、この力を抑えることが出来る強い人間になりてえんだよな。」
「別に聞いてないし、まあ静ちゃんにとってそんなこと進化じゃなくて退化だけどね。」

臨也にとってみれば退化なのかもしれねえなと少しだけ思ってしまった自分がいたのはきっと、卒業式だからだろう。こんな奴でもほとんど一緒にいたしな、まあ殺し合いくらいしかちゃんとしたことないけどよ。
「俺にとっては進化なんだよお!手前の意見は聞いてねえ。」
「俺だって静ちゃんの意見は聞いてないよ。」

ああ分かった。本当に分かった。
俺がこんなにしみじみとしていたのは、こいつなんかと離れたくないとかそんなものではなくて、

ただの
ただの…

卒業式だから

  だと…思いたい。


卒業より得る/0331


卒業式ねた、まだ書いていなかったなあと学生時代。
あと、もう一つ門田で学生時代書きたい。
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