不完全燃焼苛々 | ナノ

苦しい。何なんだ。息が出来ない。
唇が生暖かいものに触れている感触がする。
だんだんと唇の奥に奥にと進んでいく何かがある。きもちわるい…きもちわるいきもちわるいきもちわるい、
ああ、分かった。
これはキスされてるのだって。奥にと入ってきた何かは相手の舌だったなんて。
それよりも何故、自分が寝ている間にこんなことになっているのだろうか。
不法侵入者ではないか。ああ、糞。誰だ俺の眠りを妨げた奴は…

「臨、也…」
瞑っていた目を徐々に開けていく。誰だか分からない時点で少々開けるのが遅くなってしまう。
それでも微かに目を開けていけば、そこには自分の人生の中で最も嫌いな折原、ノミ蟲だった。
最初の一言は、殺されてえんだよなあ!とか何も言わずに物を投げる等のことを考えていた。
なのに何だ。俺から出た言葉は、相手の名前を呼ぶものであった。
意味が分からない。嫌いな奴が今、目前にいる。今だったら殺せる。
無断でその…き、キスをして来やがったんだからな。
それでも…心臓がばくばくドキドキしているのは気のせいなのだろう、と思いたい。
ノミ蟲によって自分の胸が心がすべてが、今。掻き乱されている。
すごく、嫌になるほど。ものすごく苛立つこと。
そして  そして
嬉しいと感じているこの感情を。

「やあ、静ちゃん。久しぶりだね、うーんと二ヶ月半ぶりかな?いや、それより二ヶ月半ぶりでこんな顔を見れるとは思っても見なかったなあ、そんなに俺に会えなくて寂しかったのか?」
久しぶり久しぶり久しぶりだなあ!と意気揚々と言ってくる臨也は本当に俺から見ても、久しぶりの顔だった。
最初の一ヶ月までは、全く会いたくなかった。ただ俺を苛立たせるノミ蟲 殺したい男 別に全く好感などを持ってはいなかった。

「寂しくはねえよ、全く!そりゃあ、久しぶりかもしんねえけどよ…」
「そうそう、久しぶり!それでさあ、俺は静ちゃんとキスをしにきた訳じゃないんだよね、そこまで良い顔をしてくれたのは本当に愉快だったんだけど。」
じゃあ、何しに来たんだよ。それよりも、じゃあ何故俺にキスしたんだよ。
それだけだ、まずそれだけを言いたかった。

「帰れ。そして、死ね!」
もう、臨也と話すのは嫌なんだ。これ以上自分の心を臨也に支配されていたくない。
傷つけられたくない。もう嫌なんだ。無理だ、断固拒否する。

「は?いや、意味がわからないんだけど。要件は言えないの、俺。」
「ああ。もう、帰れ。まじで帰れ!そして死ね」
臨也を目の前にして自分から殺そうとしなかったのは、初めてだった、気がする。
まあ、この感情は一時だけだし。もしかしたら、明日にいや一時間後に、数秒後に叩きのめすことになるかもしれねえ。

「だからさ、静ちゃんも人の話聞けよ。毎回毎回、君は人の話を全く聞かないよね。腹が立つよ、そして心底嫌だけど聞かない静ちゃんの為に率直に言ってあげる。…好きだ。」
自分が口出しをする前に、臨也が全部を喋り終えたのは初めてかもしれない。
話しを聞かないのは本当のことだし、臨也だって、俺のことが嫌いなはずだ。愛するのなら人間だよと言っていた奴だからな。

「少し待てよ、ノミ蟲。今、お前は俺になんていった!」
「…何回も言わせるなよ。…自分の頭の中でもう一度再生してくれると助かるよ。もう、言うのは御免だからね。それじゃあ、なんか腹立ってきたからじゃあね!」
止める隙さえも与えてくれなかった。全く、与えてくれなかった。
本当に、不完全燃焼のままだった。
糞野郎、本当に腹が立つ。なぜ、こいつは言いたいことだけ言って帰ってくるんだ。
そして、何故相手の意見を聞いてから…ああ!苛立ちを感じる。
糞糞糞くそおおおおおおおおおおおおお!!!
殺す、まじで殺す!殺す殺す殺す殺す殺す

「待ってろよぉ、臨也ぁぁぁああぁぁああぁあ!!!」

そして、俺は走り出した。臨也の奴を追いかけて、新宿に…
俺も好きだと伝えるために。いや、もしかするとこの手で臨也を殺すために。



不完全燃焼苛々/0330
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