この思いは後の楽しみ | ナノ

まず、最近思っていることが一つある。
何故、静ちゃんは、こうも俺を苛立たせるのが上手なのか、ということ。
俺は、あまり短気な方じゃないんだけど。
さあ、何故だと思う。

「知らないよ、もう帰って。僕とセルティの愛の巣を邪魔しないでよ」

何回も何回も新羅にその話をしているが、返ってくる言葉は先ほどのような言葉。
別に、無視してくれても良い。別に、相談に乗って欲しいとかそういうモノではないし。
新羅が聞いてくれるとも思っていない。だから、新羅の所へわざわざ来て言いたいことだけ言うだけだしね。

「まあ、良いや。新羅らしい言葉が返ってきて面白かったよ。いつもと対して変わらない言葉だけど。」
「そうかい?…まあ、どうだって良いよ。静雄もよく臨也のこと話に来るし。二人して何なの…」

嫌だなあ。何で、静ちゃんが俺のこと聞いてくるのさ。本当に、意味が分からない。
だから、化物は嫌なんだ。思考が全く読めない、読みたくない。

そんなことを考えながら、新羅の住んでいるマンションを出ていく。
ぶらぶらと久しぶりの池袋を歩いていく。
携帯を見ながら、にたにたと。もう、他の人から見たら気持ちが悪いと思うのだろうか、まあこんな眉目秀麗な美形の俺を気持ちが悪いなんて思う訳がないか。
そんなことを考えていると、
バンッッ―ガッシャンッ―!
なんともまあ、気分が良いときに来る奴だ。
そんなに、公共物投げて、自動販売機がいくらするとか知っててやっているのかよ。
しかも、あんな火山が噴火したような顔しちゃってさ。とてもじゃないけど、アイドルの幽君の兄には到底見えないな。
元は、良いのにな。…俺ほどじゃないけど!

「手は口程に物を言うっていうのは、静ちゃんの為にある言葉だよねえ。本当に、誰が嫌いか好きか分かり易過ぎはしない?」
「うるせえ!黙れ、死ねこのノミ蟲野郎が!」

どれだけ、投げれば君は気が済むんだいと問いかけたかったが、問いかけたところで手前が嫌いだからだなんて返されるのは予想出来ている。
本当に、静雄のことを理解したくなかった。

「あのさあ、この疑問だけ聞いてよ。…何故静ちゃんは俺を苛立たせるのが上手なのかな?」
「しるか。それにだ、手前の方が俺を苛立たせるのが上手じゃねえか!」
「知らないね、全く。」
本当に、死ねばいいのにと思う。
もう、殺し合いとかは高校の時代にやり尽くした。
大人になってまでも殺し合いするとか、もうないだろう。すごく可哀想な大人だ。誰がそんな大人になんかなるものか。
静ちゃんごときのせいで、俺が変な瞳で見られたくはないし。
そして、静ちゃんが気になって気になってしょうがないのも事実だ。

「おい、何考えてんだよ。」
「別に、俺が何を考えていようが静ちゃんには関係ないだろ?」
正論を言う。まあ、そんな正論なんか静ちゃんに伝わらないままなのだろうが。
それにだ。静ちゃんは、俺のことを聞きに、新羅のところにでも行っているという。
そして、俺も新羅のところに静ちゃんのことを聞きにというよりも一方的に話に行っている。

「あー!静ちゃんは、俺のことが気になるのか。寧ろ、好意とか抱いてたりしちゃう?」
俺が観察してきた数々の男女の交際や付き合う直前。それに、すごく似ていたんだよな、今の俺達。
笑えちゃうよね、こんなにも憎み合っていた俺達が本当は好意を抱いていたなんて。
アハハハハハハハハハハ!!!

「アハハハ!!!」
「別に、手前なんかに好意なんて抱いていねえよ!…その笑いを止めねえと殺す、今すぐ殺す!」

やばい。本当に怒らせたかな、やばいよな。これ、もう早く逃げ出さないと。
よし、行くか。これ以上いると命が無くなりそうだしね。

「それじゃあ、愛しの静ちゃん!んじゃ、」

さあ、あの馬鹿はいつ頃、本当の気持ちに気付くのだろうか。
まあ、それも

後の楽しみ、だよねえ!

そう言いながら、壊された自動販売機からコーヒを無断で持っていき、かしゃっとプルタブを開ける。
んー、と飲みごくごくと喉に順々と入れる。

「甘いねえ。…まるで、静ちゃんみたいだ。」




この思いは後の楽しみ/0328

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テーマ「人外ファンタジー」
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