弱心手前を欲する | ナノ

愛されたいとか愛されたくないとか。
矛盾に思ってしまうかもしれないが、これが俺のキモチ
伝わってほしいとか、この思いを相手にも共用させたいというキモチは全くない。
これが、俺らの生き方なんだろうからな。
何も、言わない干渉しない一定の距離を保つ これが、互いに理解できていれば、良い。
だけど、寂しいときは、あるだろ?
向こうにだって、あるはずだ。その時くらいはよ、甘えても 距離を近づけても…
――罰はあたらねえよな?――

「どうしたのさ、静ちゃん。」
臨也の声が自分のすぐ後ろに聞こえてくる。普段は、喧嘩している俺達だが二人きりの時か俺が怒らないときは一応会話は続けられる。
臨也を電話で呼び出したのは俺だ。本当に、来てくれるとは思っても見なかった。

「…今日、自殺しようとしている奴を助けたんだ。別に、誉めてほしいから臨也に聞いてもらう為に呼び出したんじゃねえ。
そいつを助けるために、ビルの屋上へと飛び移っただけで、自殺しようとしていたやつが、「ば…化物!」怯えた顔でそう言ったんだ。
別に、相手を怯えさせたいわけじゃなかった。ただ、一つの命を無駄にさせたくなかった。それだけだったのによお。
本当に、俺は人間なのか、?よく臨也が俺に言うように俺は人間ではないのか?ああ、くそ!別に同情して欲しいから言ってんじゃねえからな!
ただ、少しだけ傷ついたつーか、ああ!上手く言えねえ…」

普段よりか、長く喋った。同情とか、慰めとかはいらなかった。
臨也がこの話を聞いてどんな顔をするのかとかも興味がなかった。
実際、ただ聞いて欲しかっただけなのかもしれない。
この、抑えきらないこの感情を止めるためにも。
化物とか人間とか何回言われたっていい。ただ、あの表情が頭から離れなかった。
酷く嫌悪感を示している表情と自分とは違うという差別するような瞳。そして、なによりも心から恐れているという態度。
最初は、あれ、こいつ死ぬ気だったんだよな?それなら怯えなくてもいいじゃねえか?とも思った。だけど、あいつにとってみれば、死よりも俺を恐れていた。
これが、嫌だっただけなんだよな。臨也のやつなんかの言いなりになっている自分にも嫌気がさす。
臨也は、どんな顔をしているのかと見ようと顔を上げれば、
笑うのを堪える様に、腹に手をあてて声を押し殺していた。
ピキッと殺意が芽生えたが、別に笑ってくれても構わないかと思い我慢する。

「アハハハハハハ!!本当に、静ちゃんは面白いや。何?静ちゃんが怯えられているのは毎度のことだろ?それを今になって何故傷つく必要があるのか、俺には理解不能。」

ああ、話す奴を失敗したか、新羅にすればよかったかな。と思いつつ、臨也が放った言葉を自分の頭の中でリピートする。
そうだよな…今更だよな。

「あと、静ちゃんは俺にだけ傷つけられれば良いんだよ。そんな些細な事ぐらいで傷つかないでよ。」

臨也が俺を慰めているのだと本能的に理解できた。これが、臨也なりの慰め方なのだと思った。
本当に、遠まわしな言い方で、一々癇に障る口調と言葉で。もしかすると、俺よりも言葉を使うのが下手なのではないかと思った。
ただただ、難しい言葉を並べているだけで、本当のことが言えない。伝えたいことが言えない。それこそ、馬鹿なのではないかとも思った。
臨也なんかに、慰められて少し嬉しいと思っている自分も馬鹿なのだろうが。

「臨、也…手前に聞いてもらって良かった。あ、りがとな?」
「は?礼を言われることは言ってないはずだけど?何、静ちゃんって言葉も通じない馬鹿なの、可哀想だねえ」

素直じゃないところを含めて自分は臨也のことが好きなのかも知れない。
臨也だって、俺のことが好きなはずだ。これは、勘違いじゃない。

「臨也。お前は必ず俺が殺す。」
「アハハ、俺が静ちゃんなんかに殺されるはずないじゃないか。俺が殺す。」

そうだ、これで良い。俺と手前はこれくらいが丁度良い。
だけど、心が弱くなったとき、安心できないときくらいは

手前を頼りたい
手前に聞いてもらいたい
手前に…

慰めて欲しい――

こんな我侭は駄目か?

ほら、存分に俺を愛して…愛さないで――




弱心手前を欲する/0317
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