後悔先にたたず3 | ナノ




『臨、也』
『し、ずちゃん』
二人の間に居心地の悪い空気が続く。
静雄は、どのタイミングを見計らって話しを持ち出すのか考えているが、全く思いついていなかった。
臨也が先に何かを言ってくれるのを期待することを考えた静雄は沈黙の間、臨也の言葉を待ち続ける。
その反面、臨也も静雄が何かを言ってくれるのを待っていたのだが、事の発端は自分だと気付き言葉を放つ。
「あは、は。何かごめんね。悪ノリしちゃったよ」
こういうときに巧く言葉が出てこない自分を憾めしいなと自虐的な言葉を考えている。
「悪、ノリ…?」
静雄は、臨也の放った言葉に怒りを隠せずに問う。
その声音で、ああ怒らせてしまったと気付いた臨也は静雄に何を言えば、普段通りの接し方になってくれるのか。
そう、喧嘩していた一昨日までの時間に。これほど、時間を戻したいと思ったことはないな、と臨也は考える。
「おい。それじゃあ手前は、俺が…そのアレだ。好き、だからしたんじゃなく、誰でも良かったということなんだな。」
静雄にしては、饒舌に喋っていたと感じる言葉を放つ。
その言葉に対して、
「え?…ううん。違うと思うよ。俺はいくら酔ってても誰かは判別つくし、静ちゃんだって分かっていたと、思うし。しかも、静ちゃんのこと好きだしね」
遂に言ってしまったなと自分の気持ちを伝えた臨也は思う。でも、言ってしまったことへの後悔は自分が思っていたよりも少なく、逆にスッキリした。
静雄の次の反応をあまり見たくないとは思うが、拒絶的な言葉を言われても今なら大丈夫な気がする。どんとこい!と普段では考えないことを考えている自分を心の中で嘲笑う。
(本当に、静ちゃんは俺の思い通りにならないし、俺の心をも掻き乱す。)
「なら、良い。」
待ちに待ったと言えば、先ほどいっていたことと矛盾しているが、静雄の放った言葉に驚きを隠せないでいる臨也は、
「は?何、言ってんの?だって、俺…静ちゃんの同意の上じゃなく、無理やり抱いたんだよ?それは、俺に一方的な愛はあったかもしれない。でも、!」
本当に、自分は昨日から可笑しい。こんなにも感情が残っていた。特定の人を造らない為に、捨ててきた『本気の愛』。
「だから、!良いって言ってんだろ!もう、そんな辛い顔…して欲しくねえ。」
静雄は、臨也の顔を見て、非常に困った。今までには、見たことも無いような顔。
泣きそうな顔。そして、今の自分を否定するような言葉と考え。
見ている此方がとても辛くなるような。臨也を後に傷つけたいから、あの行為を許した訳じゃない。
ただ、手前なら。と考えていた自分を見て、『好き』という気持ちに気付いたから…。
「し、ずちゃん。馬鹿、だね。うざい程、男前だね」
「うっせ。手前が女々しいんだ」
「良く言うよ。俺に抱かれていた癖してさ」
二人ともの空気が以前よりも心地よくなる。静雄の言葉の意味を理解した臨也には、自分を卑下するような考えをすべて削除する。
都合が良い奴と人は言うかもしれないが、これが情報屋の折原臨也なのだ。
そして、そいつに惚れた男 池袋最強の平和島静雄もまた、都合が良い奴なのかもしれない。
「静、ちゃん。」
「ああ゛?」
「改めて、好き。愛してる。この世界中の誰よりも…なんて嘘だけど。」
「て、手前!」
「あはは、怖いよ静ちゃん。冷蔵庫投げるのだけは止めてよね。こんな至近距離じゃいくら俺でも死ぬから。でも、ほら!」
臨也は、良いながら坦々と静雄の方向へと進んで行き、抱きしめる。
「静ちゃん、あんまり上司の人と仲良く、しないでね?」
まるで、どちらが男で女なのか分からない言葉を臨也は放つ。
「あ?…、もしかして行為中に言ってた、『誰でも良いんだ、静ちゃんは、』ていう話に関係でもあるのか?」
何時に無く鋭い静雄に対し、少し嫌そうな顔をする臨也は、
「俺、そんなこと…言ってた?」
とありえない!酔っていた自分消えてしまえば良いのにと思う。
「ああ。それで?」
早く言えと焦らせる静雄に、
「あぁ!もう言うよ。静ちゃんが上司に抱きついてるとこ見た。それで、腹が立って、酒をたくさん買って宅呑みしてたんだよ」
諦めましたというような言い方で臨也は答える。
「はあ?…あ。もしかして、俺が地面に何故か置いてあった塵箱に躓いたときか?」
「え?…は?あーもう、静ちゃんの馬鹿。死ねば良いのに。本当」
明らかになればなるだけ、腹が立つ。
知らなかった方が、気分が楽だったとか、その他もろもろと。
そして、臨也がこの件以来注意するようになったのは、
酒をたくさん飲まない ことと 明確に観察する
この二つを注意するようになった。


後悔先に立たず3/0226

一応、完結…?ここまで付き合ってくれて有難うございました!初めての三本立て。
楽しかったのでまたやってみたいです^^
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