お前が教えて | ナノ

静ちゃんを本当に心から愛せる人はいるのだろうか。多分、いや何処の世界を探しても、本当に心から愛せる人は居ないだろう。
本当、可笑しいよね。同じ人間なのに、こうも愛されないなんて。あ、静ちゃんは人間じゃなかったね。
本当に君は、面白い化け物だよね。
自分は、愛して欲しいと願っていても愛してくれる人はいない。



暴力を振らない為に距離をおくのに、自分の居場所を求めて造ろうとする。
実に不愉快極まりない化け物だ。あんなのは、俺が愛するべき人間では無い。
興味対象外。
なのに、何故、

こんなにも気になってしまうのだろうか。

「しーずちゃん。」

今まで考えていた張本人が目の前にいた。普段なら自分よりも先に気付く筈の静雄に臨也は苛立ちを覚えた。

「こんなところで、何をしているのかな」

臨也が池袋に居ると分かった瞬間、真っ先に殴り掛かってくる静雄が今日は大人しかった。大人しいというよりも、何処か元気が無いような表情をしていた。
今の静雄は、暴力を奮わないと判断した臨也は、静雄がしゃがんでいる隣に立つ。

「おーい、どうしたの?もしかして、心臓発作で死ぬ?それは、良かったね、人間ならではだよ」
慰めようとしているのか判断がつきにくい発言をする臨也に、

「臨、也を…手前を見るとなんつーか、胸が締め付けられるような感覚になっ、て、そ、れで…」

静雄は、現在体験中の症状を素直にいってくる。
あー、可笑しい。静ちゃんの病の正体は、俺に恋をしていることだった。
よりによって何故自分なのだろうか、いやそれでも静ちゃんに関する沢山の情報が手に入るチャンスなのだろうか、等と臨也は、自分の利益の高い方を短時間内で考えていた。
人の恋をなんだと思っているんだなんて言われたくないね。最低な人間なら一度は必ず通る道だろう、寧ろ最低な人間じゃなくても通る道だと俺は考えるけどね。臨也は、静雄が早く答えを教えてくれという目線から目を逸らすように考えを纏めあげていく。
まずは、自分がすぐ考え始めたことを頭の隅に置いてから、客観的な立場から考え直す。そして、自分に近い人はどう考えるのかを考える。例えば、新羅とかドタチンとかなるべく身近な人などを。
そして、自分の考えを照らし合わして、答えを出す。その答えは、大抵一つに絞れる筈なのだが、静ちゃんの理解不能、予測不可能な行動や言動をふまえて考えて見ると、三つの考えが出た。どちらにしようかと考えてはいるのだが、なかなか楽しそうで愉しそうな展開がよく分からない。
これだから静ちゃんは大嫌いなんだと半場考えるのを諦め、運に任せようとしている自分がいた。
それでも良いだろうと思い現在進行形で浮かんでいることを臨也は、口に出す。
「俺も良く知らないなあ。あ、本当に心臓が悪くなったんじゃないの?新羅のところにでも言ってくれば」
三つ目に出てきた考えを口に出した。
どう出るのだろうかと、たのしみな反面不安もあった。
「あ、そうか。ちょっくら新羅のとこにでも行ってくるわ。」

静雄はそう臨也に言って此の場を後にした。
「はあ?…全く予想していなかった答えだけど、まあ気付いていないみたいだし良いか。」

臨也は、静雄が居なくなった路地裏で一人ぽつんと呟いた。

臨也は、静雄のことなど全く分かっていなかったのに、今日あった出来事を忘れようとしていた。
静雄は、自分が臨也のことを好きだということを知っていたのにも関わらず。
臨也は、自ら出した新羅という人物を予想以上に軽く見てしまったのだ。
とっくに新羅が臨也と静雄の両者とものことを把握しているということにも。

「確かに新羅は言った。臨也が俺にその気持ちを教えない確率と教える確率は五分五分だということを。そして、自分の利益を先に考えている男だとも。それは、俺も知っていることだったが。臨也は、俺のことを何とも思っていないのだろうか、新羅が推測するには、相思相愛だと思うと言っていた。ああ、考えるのも面倒だ。」

静雄は、自宅に帰り、ベッドの上で独り言のように呟いていた。
考えても考えても分からないことに苛立ちを覚え、考えることを放置して寝ようとする。
明日考えれば良い話だ。
と自分に言い聞かせながら。

寝ようとして、軽く一時間が経過しようとしていたときに、家のインターホンが鳴った。
こんか夜中に誰だよ。と心の中で悪態をつきながら玄関に向かいドアを開けると臨也がすまなそうな表情をして立っていた。

「や、やあ静ちゃん」
「おう。入れば」
何となく部屋に招きいれると、

「悪いことしたみたいだね、新羅から聞いて驚いたよ」
いつもの臨也からは想像もつかない表情をしていた。
「新羅から何、聞いたんだ?」
何となく理由は分かっていたが臨也本人の口から聞きたかったので静雄は尋ねる。
「静ちゃんが俺のことを好きなのと気持ちに気付いてた癖にわざわざ聞いてきたこと」

落胆な表情ん隠せない静雄は、

「そうか。それだけ、か。」
と言葉を返す。
やはり、新羅の推測に過ぎなかったのだな、と思った瞬間。

「俺も静ちゃんのこと見ると、胸が締め付けられるような感覚があるんだけど。教えてくれるかな、静ちゃん」

臨也の顔と静雄の顔との距離が近くなる。

「素直に言えねえのかよ、手前はっ…」
「ほら、静ちゃんってば教えてよ」
段々と近くなる、もう鼻の先がぶつかっていた。
「好きなんだよ、手前は俺のこ…んぅ、!」
静雄が最後の台詞を言い終わる瞬間に臨也は静雄にキスをした。
最初は、軽いキスをしてから、一旦唇を外しお互いの顔を見つめあってから今度は深いキスをする。
どちらからとは言えないキスをし、舌を絡ませ唾液をおくる。ぐちゅぴちゃと互いの唾液が交わる音が響く。
二人の蒸気しだした何とも言えない色っぽさに、官能的な欲望が渦巻く。
臨也は、静雄から唇を外し、
「かあわいい、静ちゃん。」
一言言ってから息を整えている静雄に、抱きついた。


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