曖昧relation | ナノ



静ちゃんを殺したいと思わなくなったのはいつからだろうか。
分かりたくもないことなのは確かだ。
ただ、殺したいとかではなく、愛したいのかもしれないという在られもない事実は認めるしかなかった。

「しーずちゃん。起きてる?」
静ちゃんが寝ている一人用のベッドが二人分の体重により、みしみしと音を出す。
何で、こう。寝ている時だけは、静かで平和を好む顔をしているのだろうか。
すごく、可愛いじゃないか。と思うが、そんなことは、どうでもいい。
何故、こんな感情が出てきたのかを静ちゃんに聞きに来ただけだから。

「…あぁ。今、起きた。つーか、何でいんだよ。」
驚いた。静ちゃんは、短気だ。沸点が死ぬほど低い奴だ。それでも、起こされた状況に腹が立っていないのは、何故だろうか。
しかも、起こしたのは俺だよ。どうしたんだろう。もしかしたら、気持ちが抑えられる強い人間にでもなれたのか、と実現することは無いと確信していた事を頭の中で考え始める。
「あはは、ごめんね。起こしちゃったみたいでさ。」
本当にどうかしていると思った。静ちゃんが、寝ぼけているのか目がしょぼしょぼとしていて、今にも眠ってしまいそうな状態でいるのを見て、自分の胸に何か熱い何かが押し寄せてくる気がして。

「あー…どうしたんだ?今、…朝の四時だっつーことは分かってるよなあ」
静ちゃんは、覚醒しきれていない状態で、時計を見る。自分が思っていたよりも早い時間だったことに気付いたのか、静ちゃんはひくひくと顔を引き攣らせている。もうすぐ、キレるなと思ったので、言葉に気をつけよう。
「知ってるに決まってるじゃん。そんな自分が来た時刻が分からない馬鹿じゃないんだからさ。大丈夫?」

「…じゃあ、殺されるって分かってここに来たんだよなあ?…それなら、殺されたって仕方ないよなあ。殺されるためにここに来たんだよなあ。それなら、とっとと死ねやノミ蟲!」
あー、静ちゃんを怒らせてしまった。もうちょっと優しく言ってあげた方が良かったのかな。まあ、そんなのはどうでも良くてさ。

「ちょっと待ってよ、静ちゃん。今日は、喧嘩しに来たんじゃなくて、聞くことがあったからなんだけど…ってうわぁあ!」
もう、本当に話が通じない。腹がたつ。だから、こんな馬鹿な奴を相手にしたくないんだ。只の、時間の無駄になってしまうから。
でも、静ちゃんに対する気持ちは、俺が人を愛しているのとは違う。それだけを聞きに来たのに、最悪な状況になっているのは、俺の気のせいじゃない。
ベッドから起きた静ちゃんは、そのベッドを手に持っている。そして、俺の方を向いている。
もっと最悪なことは、ここがかなり狭いこと。ボロアパートなのだから仕方がないが、これでは動きずらい。
命中率は、俺の死を期待して良いほど高かった。

「静ちゃん。…殺したくないけど、殺したい。そんな気持ちの正体知らないかい?」
これは、賭けだった。静ちゃんが、普通に答えてくれるか、ベッドを投げてきて俺が死ぬか。この二通りしかない筈だから。
そう考えていれば、静ちゃんが固まっていた。何を話す訳でもなく、ベッドを投げる訳でもなく。
予想外な行動をするのが、静ちゃんだと思っていたが、さすがに驚いた。もっと、静ちゃんを観察しないとなと思い直す。

「、あのよお。」
控えめに、歯切れが悪そうに静ちゃんが話しを掛けて来る。
「俺も、少し前に新羅と門田とかに聞いたんだけどなあ、…」
新羅と門田に俺が考えていることを言った?それって、あれだろ。静ちゃんが俺に恋をしているってことだろ?ていうか君は今まで恋を知らなかったというのか。
アハハハハハハッ…本当笑えるよね。だって、俺も男だし静ちゃんも男だよ?何言ってんの!ってか、静ちゃんってそっちの人だったんだねえ。
だから、女が寄り付かないのかよ。そう言おうと思ったのに、自分から出た言葉は、

「恋だよね、そんなことは知ってる。俺、静ちゃんのこと嫌いだけど、好きだよ?殺したいけど殺したくない。」
自分が言わないと思っていた台詞の中の一つだった。
これを考えたとき、何この矛盾してる言葉。馬鹿らしい、こんなのを本人の目の前で言う奴を見て見たいよ。大笑いしてあげるから。
「…!冗談は、他所でやってくれ。これは、笑えねえ」
一瞬驚いた顔も、すぐ冷静な顔に戻り、低音で怒られる。おい、ちょっと待てよ。俺が、こんな恥ずかしい思いして言った言葉を、他所でやてくれだって?しかも、笑えない冗談?
本当、この低脳な頭を所有している静ちゃんを殺したくて堪らないよ。
「なあんだ、気付くの早いね。静ちゃん。まあ、それじゃ!」
苛立ちを感じずには居られないこの部屋を早く出たかったので、静ちゃんにそれを告げて帰ろうとする。
「っ二度と来んなあああ!!」
泣きそうな顔をした静ちゃんが、すぐ近くにあったのであろう、ベッドを俺の方に投げつける。
それを余裕に交わしてから、静ちゃんの泣きそうな顔をしている理由を探す。
そんな、状況はどこにもなかった筈だろ。何で、あんな顔するんだか。
本当、静ちゃんってば死ねば良いのに。
それでも、殺したいのではなくて、愛したいと俺は心に言い続ける。


「たとえ、静ちゃんが俺を心の底から嫌っていたとしても。必ず、手に入れてみせる。」



曖昧relation/0303

やはり、臨→←静が丁度よい。悩みまくれば良い。愛し合えば良い。
殴り合えば良い。
沢山のことを体験してから、二人は結ばれて欲しいと願います^^
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