不明な関係でも愛は其処に | ナノ


※微裏

手前に、
(静ちゃんに)
手前に、本当に心から…
(静ちゃんに心の底から)
愛して欲しかった。
(愛して欲しい、のかもしれない。)


「し…ずちゃん」
臨也は、荒々しい息とともに静雄の名前を呼ぶ。
二人がこんな関係になって、もう一年と数ヶ月が経っていた。
その行為には、愛はなくただ、欲望をぶちまけるだけの性欲処理場だった。
臨也は、静雄が好きだ。そして、静雄の方も臨也が好きだ。両者共々愛していると言っても、過言ではないだろう。
そんな中、二人は相手に思いを伝えられないで居た。
どこの中学生・高校生の恋だよ、と突っ込みを入れる友人もいたが、二人とも相手が自分に対する思いを知らぬまま、今の関係を維持している。
いい年扱いて、何をやっているんだと、本当に思う静雄と臨也だが、思いを伝えたことで、何かが変わってしまうというのが怖いのであろう。
喧嘩や口が強いからといって、心が強いとは限らない。この言葉が一番合う二人だった。
そして、今行為真っ最中に至るのだが、
「うぁ…い、ざやぁ。今、日し…つけえ んぁ!」
静雄の乳首を丁寧に優しく強く厭らしく触られ、舐められる。
いつもよりも丹念に、時間を掛けて。早く、触ってくれと、言いたい静雄なのだが、自分のプライドが潰されていくような感覚に何も言わないままでいた。
「ほら、今思ってること言ってよ。し、ずちゃん」
静雄を挑発するかのように、臨也が嫌味のように言う。
「…んあ。ぉねがいだ…焦らしてんじゃ、ねぇ…んぬっ」
焦らすな、そしてクタバレノミ蟲と罵声を浴びせようとしたのだが、その言葉は臨也によって塞がれる。
ねっとりとしたキスに、嫌悪感は全く感じていない自分に酷く腹が立つ静雄は、この際、臨也を驚かせてみるかと、舌を積極的に絡める。
臨也は少し、驚いたような顔をしてから、口角を上げて、奥へ奥へと静雄の口内を犯していった。
時折、聞こえる静雄の
「んぁ…ふぁ、い、ざぁ…」
自分を呼ぶかのような甘い声に自身が熱くなるのを感じる。静雄は、臨也のキスに快感を覚えたのか、僅かに腰を揺らし始めた。
それを、見て喜びだした臨也は、唇を外し、静雄の自身にしゃぶり付く。
「え、ちょ待てよ、臨、也…?」
この行為を始めてから、一年以上が経つが、フェラなどの行為は、静雄だけが経験していて、臨也は一回もしなかった。
静雄は、臨也は只の性欲処理としてしか、俺を見てないからという勝手に考えた自分の中の合言葉をいつも脳に伝達していた。
何にしても、喜んではいけない。相手は、自分がしたいことしかしない。自分達は、恋人同士がするセックスではない。只の膨張しだした自身の精液を出し合う関係だ。
この言葉は、二人の暗黙の了解にもなっていた。只、相手と一緒に考えていないということは、それが正しい結論では無いのかもしれないが。
「ふるはい。はまれよ!…」
「ひぁっちょ、喋、なぁ…」
静雄の自身を奉仕していた臨也は、静雄の停止への呼びかけにうるさい、黙れ!という言葉で片付けてきた。
こういう強引さは、変わらねえよな。今も昔も、と思い出に耽っている暇は無く、ひたすら喘ぎ声を出していた。
「ひんぁ!い、ざや。それは、やば…い」
絶頂がすぐ近くにあった。その瞬間に、口蓋を濡れた亀頭がなぞって臨也の唇から離れていく。臨也が飽きただけなのだろうが。
銀色の淫らな糸が包皮に鈴口にヌメヌメと光る。
「静ちゃんって、結構 遅漏だよねえ。」
「うっせえ!…はやく、挿れろよ」
絶頂に成りかけの状態での放置はさすがの静雄でも辛いのか、臨也を求める。
「あはは、静ちゃんってば、いんらーん」
臨也は、玩具をもらった子供のような顔をしながら、静雄のアナルに指を挿れ、優しく傷が付かない様に拡げる。
静雄は、早く挿れろと臨也を促すようにするが、痛いのは静ちゃんなんだからさあ、もうちょっと大人しくしてくれると嬉しいんだけどな。同じ男として、がっつくことはオススめしないよ?と臨也に言われて、なるべくでいいから、早くしろよと引き下がる。
「よし、これくらかなぁ?何か、この姿が厭らしいよね?何か、無理やりヤってる感じ?」
静雄は、腕を一組に纏められていて、足はM字開脚同然のように開いている。そして、なんとも厭らしい火照った顔とうるうるしている瞳。
黙っていれば、綺麗な顔立ちの静雄に興奮を隠せない臨也は、ズボンを脱ぎ、ベルトをがちゃがちゃと外し自身を静雄のアナルの近くに持っていく。
そして、ズブブッと一気に挿入する。
ほぐした蕾に亀頭をあてがうとにゅむりと咥える静雄のアナルに臨也はただ、欲情を募らせていた。
こんな、一気に挿れられたんじゃ、ならす意味はないのではないかといつも静雄は疑問に思っている。
「ふあ…もっと、深く…」
熱が篭ったような声とともに、深く突けと要求される。
「本当、可哀想なほどの淫乱だよね、静ちゃんは…」
消え入りそうな声で、静雄におもったことを言う臨也。
もっと深く深くと、臨也自身を案内するかのような静雄に、これは本当に癖になるなと臨也は心から思った。
「し、ずちゃん…い、くよ?」
余り動かずに只、静雄の尻が指名するかのように自身を持っていくところまで、来たところで、臨也は腰を振り出した。
こんな、体力使うことあまりしたくないんだけどな、いつもなら静ちゃんに腰を振らせるところだけど、今日は何だか気分が良いから。
静雄は、どのタイミングで臨也が深く突き刺さり、激しく動かしくれるのかが分からず、興奮と喘ぐばかりだった。
「んあ!ふぁ…あんっ」
そろそろ、臨也もラストスパートを掛けてきて、静雄も早く達したくて、両者とも激しく腰を動かす。
「んあぁああぁあ!…ふぁ」
「んく、い…く」
二人とも同時にとではなかったが、静雄が出精したすぐに、臨也は静雄の中へと精液を出した。
ごぷっと音を出して、静雄の中に精液が入っていく。静雄は逝った後で、敏感になっているのか、それだけでも感じるようになっていた。
「はあー。今日は何か、疲れた。」
今までの行為が嘘だったかのような、気の抜けた色気の欠片もない臨也の声と、
「疲れたのは、俺の方だ!…明日は仕事ねえから今日は、このまま寝っか」
「あっ、ずるいよ、静ちゃんだけ!俺は、朝から仕事なのに。」
静雄の仕事無い宣言に、ズルイと頬を膨らませている。先ほど、どちらが上だったのかと聞かれた即答で答える人は、本人達しか存在しないほど、今の臨也は可愛かった。
静雄は、
「あ〜、今日帰り何時?」
と、臨也の帰宅時間を聞く。
「んー。午後の8時くらいかなー」
気だるさを含んだ声に、
「じゃあ、飯作っておく。何でも食えんだろ?」
「本当?それじゃ、愛しの静ちゃんの為に早く帰ってきてあげるね。」
「愛しのじゃねえだろ?、この行為には、何の意味も無いはずだ。」
「…そうだよね。まあ、遅くなったらごめんね?」
「別に。」
こんな会話は、日常茶飯事になっていて、臨也が静雄の家に来るとこうなってしまう。
どちらも、相手を愛しているからこその行為であるのだが、その両者が相手の気持ちを知らないのだから、何も言えないで居る。
この二人の関係がいつまで続くのか、はたまたすれ違いになり、別れてしまうのか、両思いになれるのかはまだ、結末は出せない。
どちらかが、一歩を踏み出すまでは、この関係はこのままなのであることは、間違いないのだが。

不明な関係でも愛は其処に/0302
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