一生矛盾愛 | ナノ


あー、腹減ったな。
1人池袋の街を歩く。
取り立ての仕事の帰りである静雄は、空腹に悩んでいた。
臨也の奴は、と。
よし、今日は居ないな。彼奴が来ると苛々するからなと静雄は、池袋をキョロキョロと見回す。

「しーずちゃん。こっちだよ」
聞き覚えのある声、無性に腹が立ってくる。しかも、静ちゃんなんてふざけた呼び方をするのは、先程居ないと確認したばかりの臨也だった。

「いーざーやぁー!手前、二度と池袋に来んじゃねえ!」
自分がキレているというのは分かる。
どうせこの苛立ちは止まることはないだろうから、自分の我慢なんぞ捨ててしまっている。
畜生、腹が立ってきた。殴り殺してえな、今日こそは!
意気込む静雄に対し、臨也は
「あららー、何か、静ちゃんってば急に熱血になるよね、本当。暑苦し過ぎ、」
「うっせえよ。黙れノミ蟲」
臨也の顔を見て最近、新羅に言われたことを静雄は思い出す。
『何かさ、高校時代から思ってたんだけど、臨也ってきっと静雄のこと好きな気がするんだよね、ま僕の勘だけど。でも俺がセルティを好きという思いの方が勝つけどね。ていうか、好きというよりも愛!そうだよ、…』
後の話しはどうでも良くて、聞き流していた。
何故、俺のことを殺したい、大嫌いだと思っている臨也が…
ああっ、全くわからない。臨也を気にかけている俺も、臨也は俺が好きだという面白くない冗談を言ってくる新羅にも。
これは、本人に聞くしかねえのかな、つか何で気にしてんだ臨也のことを。
「静ちゃん。何か大丈夫?いや、全く心配なんてしてないけど。あっ、死ぬ?もうすぐ死ぬの?」
取り敢えず、こいつは何なのだろうか。今、心配されたのかと思った瞬間に心配してないという。
あれ、手前が熱あるんじゃねえかと疑問が浮かんだ。
「おい、熱でもあんのか?」
「は?全然無いけど、どうしたの静ちゃん、気持ちが悪い」
何か、よく分からないが気持ちが悪いって言われると何故だか、ショックが大きい気がする。まだ、気持ち悪いとかキモいの方がマシな気もする。
話は脱線したな、やっぱり臨也は臨也だった。少しでも気にかけようとした俺が馬鹿だった。本当、新羅の奴が変なこと言い出すから、俺も気になっちまったじゃねえか。
「うっせえ。、なんかムカついてきた。殴らせろ」
「理不尽だよ。」
臨也は即答で答える。普段は、遠まわしな言い方とか妙に長ったらしい言葉とかいう癖に、今日は一言二言しか喋らない。(臨也にしては、の話だが)
マジで、どうしたんだ。遂にあれか?全ての脳が停止にでもなったか?
「今、絶対ふざけた事考えてたでしょ静ちゃん。全く失礼極まりないね。」
急に臨也が笑い出す。その笑い方が無邪気な子供が笑うようで、でも何か不愉快な笑みが入っていて、こいつは正真正銘の臨也でしかなかった。
「君は殴る、殺すしか言えないと思ってたけどさ、人の心配は出来るんだね。良かったじゃないか、人間に近づけたね。
でも、静ちゃんに心配させることを覚えさせた俺の方が誉めてあげたいくらいだけどね。」
こいつ、殺したい。本当に殺したい。
「俺は、人間だし、平和島静雄って名前があんだよ!(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺…)」
「一応さ、俺が誉めた瞬間に殺すしか連覇しないの止めてくれないかな。誉めてあげた意味がないじゃないか。
あ、馬鹿だし人間じゃないから誉めてくれたという感情も持ち合わせていないのか。それは、酷なことを言ったね。」
よく噛まずに喋れると思う。俺には、すぐ言葉なんか出てこねえし。
「うるせえよ、黙れ!」
新羅が言っていた言葉が脳裏に過ぎる。一分一秒遅れることなく。新羅の声というオプション付きで。もう、頭が痛くなってきた。
辛い辛い、何で俺が臨也のことで悩まなきゃいけねえんだ。
もう、ノミ蟲なんかと関わりたくねえのに。あいつが現れるだけで物をすぐ投げる。
自分が分からない。嫌いな奴なら自分から、会わなくたっても良いじゃないか。なのに、自ら行く俺は、何なんだ。
人と一緒にいたい、誰でも良いからこの力と沸点の低さを含めて愛して欲しい。それに唯一当てはまる存在が、臨也。だとでも言うのか。違う。
全く違う−違う違う違う違う違…
幽やセルティ、新羅、トムさんだって俺の傍に居てくれている。傍かどうかはしらねえ奴も居るが、俺に恐怖を抱いてねえ。
門田達だって、そうだ。傍には、皆が居る。俺の力、性格を知っていて、居てくれる。
でも、そん中に臨也が居ないと腹が立つ。嫌いな奴なのに、殺したいのに。
他の奴よりも、ずっと傍に居て、
「ねえ、百面相見れて楽しかったんだけどそろそろ飽きた。何か、言いたいことあるなら言ってよ。」
臨也が話を掛けて来る。これが、何なのかもよく分からない。
「…お前は、俺の…傍に居て、くれるか?」
只、これだけは聞きたかった。もちろん先に出てきた幽やセルティなども大切だ。でも、臨也は他の奴とは違う大、切。
「、!どうしたのさ静ちゃん。ま、良いけど。
そりゃあ人生の最後は何で死ぬのかは気になる処だから居てやるけどさ、本当何で死ぬのかな、寿命・自殺・病気・安楽死・縊死・餓死・過労死?もしかして全く想像できない心中とかかな」
本当に、こんな言葉が良く出てくると思う。
「…心中か。しねえよ絶対。」
「食いつくとこそこなんだね。ま、どうでも良いけど。何?俺が傍に居て欲しいの?」
傍に居て欲しいっていう訳じゃねえ。
「居て欲しいとは思わねえ。」
「良いよ。傍に居る。だからさ、俺の傍にずっといなよ?」
自分だけじゃなくて、臨也が傍に居てと言った。この感情が何と言うかなんて全く興味がなかった。
只、こいつが傍に居る。それだけで。
「ああ。つーことで死ぬなよ!」
返事だけをしながら、右となりにあった自動販売機を投げつける。
「本当、静ちゃんの馬鹿力は困るよ。構うのも面倒だから、んじゃ!」
軽々と避けながら、走る臨也に殺意が沸く。
嗚呼、俺にもわからないこの感情は何処にやれば、良いのだろうか。


興味が無いくせに中々自分から消えないこの感情を…



一生矛盾愛/0228
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