殺したい。馬路で殺したい。嗚呼、何故こいつは態々池袋に来るのだろうか。
しかも大胆に、態とらしいくらい坦々と歩き、不敵な笑みを浮かべながら。
「何で手前が池袋に居んだよ、いーざーやーくーんー!出てけっ」
「じゃあさ、一つ聞くけど、池袋に来るな来るなって言うけど別に池袋の全体が静ちゃんのモノじゃないでしょ?さて、何で絡んでくるのかな。」
嗚呼、初めて聞く臨也の正当な発言。
最近は、全くと言って良いほど彼奴の話しに付き合ってもいなかったし、彼奴と池袋で顔を鉢合わせるのもなかった。
俺の心はいつまでも穏やかでありその反対に、忙しなくもあった。
「おーい、静ちゃん。どうしたの、とうとう死ぬ?」
胸糞悪い。俺がこいつに会いたがっていた?いやいや、無い。全く無い。
「ちょっと、そこまで無視されると腹が立つなあ。」
「手前のせいで俺が悩んでんだろおが!黙れ、」
よし、臨也が黙った。
さて、考えてみよう。
彼奴の顔を久し振りに見て、どう感じたからだ、まずは。
…、安心した気がする。嗚呼生きてたんだなとか。
あれ、何故だ
「しーずちゃん!」
臨也が声を掛けてくる。
まあ、臨也にしては黙っていた方かも知れないので一応耳は傾ける。
「なんだよっ」
「んー、そろそろ気付いて欲しいかなあ。」
気付く?何をだ。
あ、臨也の髪少しだけ短くなった気がする。
「髪、短くなった。」
「いや、それはどうでも良いんだけど、気付いてくれてありがとう。他だってば気持ちの面で」
「あっ、手前が目の前に居るのにあんまり苛々しねえ」
「うんうん、それで」
「えと、それだけ。」
臨也の反応は、凄く見ていて飽きない。
普段なら突っ掛かって表情や仕草等は見れないから。
「あー、もう!静ちゃん好き」
あまりにも正解を当てない俺に痺れを切らしたのか自分から言葉を言ってきた。
あれ、こいつ何て言った?好き、彼奴が誰を?
「は?」
「だから、静ちゃんのこと好きなんだって」
「あ、」
分かった。この気持ち。
忌々しく胸糞悪いこの感情の正体。
恋だな。
あー、俺臨也のこと好きだったのか。
恋に気が付く三秒前/0209