物欲嫌い好き一緒 | ナノ

※学生

物欲がない訳じゃない。
何か欲しいものがあるかと聞かれれば、
それは自分で買えるだろうとか、他人から見れば安物だと言われるようなものがほしいと思うんだ。
だから俺は言った。
「タバコが欲しい」
「…、なぁにふざけたこと言ってんだ。タバコが欲しい?手前で買え!」
屋上でフェンスに寄りかかりながら座っていた俺を、仁王立ちで上から見下ろしてくる静ちゃんはそういい放った。
何だよ、全く、聞いといて失礼な反応だ。俺は今、何よりもタバコを欲っしているというのに。
というか、タバコなんてものは本当は嫌いで。だって、肺とかが悪くなるのも絶対に嫌だし、臭いし歯が汚れるし何も良いことは無い。
だけど、タバコが欲しい。単刀直入に言えば、「静ちゃんのタバコが欲しい。」に繋がる。
そんなことを考えていたら、静ちゃんは、今くわえている短くなったタバコを持ち俺の方へと寄って来た。
「どうしたの、静ちゃん」
「口あけろ口。」
静ちゃんに言われた通り、口をあけてみれば、ブワーとタバコの独特で嫌な臭い極まりないものが入ってきた。
静ちゃんは、短くなったタバコを吸い、それを吐かずに俺の口へとうつした。
いや、これは俗に言うキスという行為なんだけど、というかそれはどうでもいいんだけど。
何故こうも…あー、調子が狂う。だから静ちゃんは大嫌いなんだ。
「、ケホッ!な、何すんの静ちゃん…」
タバコに慣れて無かった俺は、咽てしまう。あー、酸素が脳に届いていない気がする。嫌だなー、ニコチン中毒になるのも。
なんか、人生をそれで終わらせたくないしね。
「何って、手前がタバコが欲しいって言ったんだろ?」
そういえば、静ちゃんは馬鹿だったな。そのことなんてすっかりと忘れていた。
そうだ、どうしようもなく馬鹿で、鈍感で、最悪な奴で化物で…でも、
「静ちゃん。嫌いじゃない、」
「ああ。俺も嫌いじゃない。」

「ていうか、どうしたの?いきなり欲しいものなんか聞いて」
そう訪ねると彼は「気分」とだけ答えた。
意味がわからないが、気分なのだから気分なのだろう。
静ちゃんのぎまぐれは今始まったことじゃないし、これ以上深く聞いても言ってはくれないだろう。
しかも俺も良く気分で色んなこと言うし。
「じゃあさ」
一息挟んで考えをまとめる。
タバコは静ちゃんので十分だし、静ちゃんは俺の傍に一生いる。静ちゃんが居れば他に欲しいものは特にない。
これが答えだよ。静ちゃん。だから早く俺に抱かれてよ。何時でも抱いてあげるから。肉体も愛してる。


物欲嫌い好き一緒/0221
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