傘を邪魔そうに持ち、煩わしいかのように振り回している子供を何人か見つける。ああ、無邪気な子供は何も考えずにあんな他人に迷惑極まりない行動をしているんだろうか。それとも計算をして、わざと周りに迷惑を掛けているのだろうか、だとしたら将来が心配になる。まあ、イエスやノーという答えをするやつよりかは立派な人間だと俺は思うけどね。そんなことを歩きながら考えていれば、子供たちの傘が当たってしまいこちらに申し訳なさそうに謝る子とてめえがここにいるからいけねえんだよ、と言いたげな子がいることに気付く。傘が当たってしまったくらいでは怒らない俺には、子供たちを観察するくらいしかなかった。
「ああ、怪我はないし怒ってもいないから、好きなだけ遊んできなよ。」
一言言えば、子供は何故か悲しそうな顔をして、お兄さんは怒らないんだね。と言ってきた。ああ、わかった。この子たちは、ただ単に構って欲しかっただけなのかもしれない。知らない人にでも親にでも、少しでも自分を見てくれている人に。
「なにを考えているのか、聞いてもいいかな」
「なにをかんがえてるだなんて聞かれてもわからないよ。ただおしゃべりしてくれている人をさがしてるんだ。おやはかえってこないの」
不憫に思った。はたして、この子の人生は良いものになるのだろうか。ここで、お金を渡しても悪い奴らからお金を取られて抵抗して身体に傷を負ってしまうのではなかろうか。考えすぎかもしれない、考えなさすぎなのかもしれない。こういう時に、あいつならどうするんだろうか。
そんな考えのなか、俺は子どもたちの手を握った。暖かくて幸せな気分になった。
「ありがとう。」
と、子どもたちは言って離れていく。手を再び近付けようとしても無理なようだった。もう、自分にはなにも出来ないことを知った。
そんな夢を見たと話せば、静ちゃんは、黙って抱き締めてくれた。
「そうか、手前が助けるなんて珍しいじゃねえか」
「うん、俺にだって人を助けたいと思ったことくらいあるんだけど。失礼だな…」
よしよしと頭を撫でる静ちゃんはいつもと違って見えた。ああ、これも夢なのかもしれない。学生時代の初めは静ちゃんと仲良くなるのを望んでいたからなのかな、
夢さえも侵食して悪い気はしなくて/0301