腰がいたいと一言呟くと、幽くんは、苦虫を噛み潰したような顔をしてしまった。別に、君を責めたい訳ではないからそんな顔をしないでよ。と言えば、もっと沈んだ表情になってしまった。否、幽くんにはもともと表情なんてものはないのだが、長くいれば表情なんて読めてきている。俺は、人間が好きだけど、幽くんは人間のような表情をしない、喜怒哀楽を殺しているのは静ちゃんの為であるから。たまに、笑って欲しいと思うが、人様の兄弟関係には口出し出来ないので、笑ってだなんて言えないでいるのは事実。
「臨也さん、あなたはなぜ解るのですか」
たんたんと口を動かし、俺の頭を撫でる。年下に頭を撫でられるのも悪くないなとご機嫌になりながら返事をする。
「、幽くんを見ていたからじゃないかな。しかも俺は、たくさんの人を観察してきた。だから、少しの変化も理解できる。幽くんは、感情がない訳じゃないからね、」
情事後にもなると眠気が襲ってくる。それでも、口は動かし幽くんのお腹に腕を回してぎゅっと絡み付く。余分な肉なんてない身体は柔らかい訳ではなかったけれど、手入れが行き届いた肌はすべすべで気持ちが良かった。意外と筋肉がついていて、巷で言われている細マッチョというものか、と思考を巡らせ考えた。
余計なことを考えていれば、幽くんはいつのまにか俺の首筋に顔を埋めていた。急にぬめっとしたものだから、ひゃっと声を出してしまう。
「いまの可愛いですよ、」
だなんて、クスッと笑いながら言うものだから、意地悪だよね、そういうところ。と嫌味半分で返せば、一応、兄さんの弟ですからと返されれば何も言い返せなくなってしまった。
「もう!まあ、いいや。そろそろ寝ない?」
「そうですね、明日は僕も朝から仕事ですし、臨也さんもでしょうしね。」
毎日会える訳ではない、どちらとも忙しいからね、と言い、眠りにつく。
寒さに紛れて、思いっきり抱き着けば、抱き締め返してくれて、幽くんの鼓動を聞きながら眠った。
ああ、次はいつ会えるのだろうか。
君を見ているからこその…/0302