Side アポロ

あの日から数週間の時が流れる。

愚かな父と兄は、兵たちの厳重な警備の元で生活をしていた。常日頃から監視されているのは、さぞや居心地が悪いものだろう。

だが、自身が招いた悪行の末路だ……その身で受けねばならん。

罰を下すのはもう少し先にするらしく、その間にどのような事をしてやろうか、と模索しては面白がる姫に呆れたようなため息を漏らす。この様子では、俺が何を言ってもやめようとはしないだろうから……

そして今日、街の危機を救ったとして英雄と称えられた俺の凱旋パレードが行われた。

たくさんの俺の名を呼ぶ声の中には、姫の名を呼ぶ声も混ざっていて……俺だけでなく彼女も凱旋を行った。


「な、何で私も……」

「民が望んだことだ。応えねばなるまい?」

「そうだとしても……!」


カァァと頬を赤らめ慌てるその姿を見ると、先日見た逞しく荒々しい気迫を持った人物と同一など誰も思えまい。


「それにまあ、丁度良いではないか。婚礼の前祝いともなる」

「こ、こんれ……ッ!?」

「? 何を驚く必要があるのだ。俺の隣に立つ妃は、お前以外にあり得ん。民も、それを望んでいよう」


メイドに頼んで着飾られた彼女は、化粧とは違う赤みを帯びて視線を泳がせている。

露出した項に、普段服によって隠れている肩が出る服をまとう姿は……本当に美しく、俺を魅了していく。

そんなことなど、当の本人は気付いていないようだがな。


「力を使わずとも、お前と民と、国の未来を作っていけると思っている。トロイメアの姫よ、我が妻となり未来を共に歩んでくれ。愛している」


何か言葉を発しようとする彼女の唇を塞ぐと、周囲から驚きと祝福の言葉が行き交う。

唇に触れるだけの軽いものではあるが、彼女を黙らせるには十分すぎる効果を発揮する。

そっと離れると、林檎以上に顔を真っ赤にしながら「私も、愛してます」と優しく微笑みながら俺の腕の中に収まった。


(お前は、俺のモノだ……逃しはしない……)


腕の中に収まる愛しい存在を抱きしめ、逃がすまいと腕に力を込めていく。

目の前に広がる倖せと、その先で待つ明るい未来に胸を熱くさせながら、天高くから降り注ぐ陽の光に祝福されるのだった。



END
prev / next
(3/3)
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -