▽ モテ男対決
「私の王子様はどこに……?」
大体の買い物も終わり、手提げ袋を手にしながら店を出ると……そこにはキャットガールが口元に手を添えながらキョロキョロと辺りを見渡していた。
あまりにも目立つ風体に足を止めていると……
「今日もまた、乙女をひとり泣かせてる♪」
一人の男の、歌を歌うかのような声が聞こえてきた。
「? 一体、なんですか……?」
「そんな罪人どこにいる♪」
辺りを見渡すチェルシーの言葉に答えるかのように現れたのは、一人の青年だ。
「そんな罪人ここにいる♪ フッ、悲しい想いをさせてゴメンよ、キャティーガ〜ル」
ファサッと髪をかきあげながら話す彼は、スタンたちに気付くと目元をキラリを輝かせた。
「七将軍のローズプリンス。ロベルト・リーン。乙女の涙に誘われて、華麗に参上」
「へー、かっこいい人だな〜」
純粋な感想が、スタンの口から漏れる。
「ふんっ、気に食わないぜ!」
「ちょっとあんた! 私のリーンさまになんて事言うのよ!!」
ハッと小ばかにするような口ぶりに、カッと眼を見開かせて食いかかったのはキャットガールのほうだ。
「ああん? こんな男のどこがいいんだ? 俺様の方が断然、イイ男だぜ!」
「リーン様がスフィアレンズなら、あんたなんかくずレンズよ」
なんとも分かりやすい例え……いや、暴言を吐く彼女。そんなキャットガールの言葉に、流石のコングマンもプチッと切れたようだ。
「おうおう、言ってくれたな! よし決闘だ! 俺様の闘技場へカモン!」
キラーン! と頭部を含めた顔全体をキラキラと輝かせながら空へと指差すコングマン。
だが、彼の発言にスタンやウッドロウは「えっ」と声を漏らすのだった。
「……これからノイシュタットへ行くのは、勘弁してほしいな」
ウッドロウの言葉は最もだ。これから兵器工場跡地へと向かうことになっているのだ、余計な寄り道をしている暇はない。
「ん〜、このリーン様と戦うなら、モテ男対決ですねぇ」
「「モテ男対決?」」
頬に人差し指を当てていたチェルシーの言葉に、ウッドロウとスタンは首をかしげた。
「解説しましょう!」
ポンッ、と手を叩きながら声高らかにチェルシーは言葉を続ける。
モテ男対決とは、すなわち街行く女性を捕まえて「どっちが好み?」と聞いていき、その結果より多くの票を集めたほうが勝者となる対決のことだ。
街行く女性達に清き一票を貰っていくという、第三者を巻き込んでの対決ともいえるだろう。
「うおぉぉ、燃えてくるぜ!」
「はっはっは。この俺に勝てるかな?」
メラメラと闘志を燃やすコングマンに、余裕の笑みを浮かべるリーン。双方の意気込みに、ウッドロウが大きく頷く。
「では、私がこの勝負を取り仕切ろう」
こうして、コングマンとリーンによる『モテ男対決』が幕を開けるのであった。
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