02
目を覚ますと、体はほとんど動くことが出来なかった。
ふらふらのアズールの体を、サトミが支える。
「姉……さん……」
「黙ってろ、これ以上喋るな」
目もうつろで息も荒い……アズールも、死期が近いのは分かっていた。
「姉さん……一つだけ、頼み……ある……」
「……何だ?」
気配を探るが、近くにカダージュがいないことに気付くアズール。
「カダー……ジュに、会いたい……」
拳を握り締めるアズールを見て、サトミは目を伏せて頷いた。
「分かった。連れて行ってやる」
アズールを抱き上げ、サトミは空を飛ぶ。
「ありがとう……そして、ごめんなさい……」
そのアズールの言葉は、小さく風に寄って消されてしまった。
****
「よっ!」
サトミが降り立つと、そこには、カダージュを支えるクラウドがいた。
「サトミか……そっちも終わったようだな」
「まあな〜」
クラウドとカダージュの気配を察するアズール。目を開いてカダージュの方を向いた。
すると気配に気付いたのか、カダージュもサトミの方を見る。
「姉さん……?」
「しっかりしろ! アズールちゃんも連れてきたぞ」
「カダージュ……」
残りの力を振り絞って、アズールはカダージュの手を取る。
「色々、大変だったね。少し疲れちゃった……リユニオンも、失敗しちゃったし…」
空を見上げ、目を閉じるアズール。カダージュが何かを言おうとした時だ。
―カダージュ―
「え?」
不思議な声が聞こえてきたとカダージュは思う。そして空から雨が降ってきた。
あの教会で降っていた雨と、同じものが……
―もう 頑張るの やめよう?―
カダージュは手を握り締め、空に向かって言った。
「母さん……なの?」
―みんなのところ 帰ろう?―
「……うん。アズール、一緒に……帰ろう……」
「カ、ダージュ……?」
彼の方を向いて、アズールは不思議そうな眼差しを送る。
「母さんのところ、帰ろう」
「――――そうだね」
涙を流し、ゆっくりと頷くアズール。カダージュの手をしっかりと握った。
そして、カダージュが右手で何かを掴む動作をすると、その手から緑色の光に包まれて消えていく……
その時、脳裏にはヤズーとロッズの姿がよぎる。
「――姉さん、後の二人……お願いします」
光に包まれる直前、アズールの声がちゃんと届いたのかどうか……。
届いたことを願いながら、二人はまた瞳を閉じた……
****
『ちゃんと言えた?』
気がつくと、そこまさっきと同じ白い空間。
心配そうに、少女はアズールにそう問う。周りを見渡すと、そこにはカダージュの姿は見えない。
―聞こえたかどうか分からないけど、言えたよ―
『そうか、なら……良かったね』
―うん―
『あ、またお客さんかな』
少女がそういいながら上を見上げる。アズールも、つられるように見上げた。
―!!? 姉さん……!? どうして……―
上空からゆっくり落ちてきたのは、特徴的なコートを羽織る女性…サトミだった。