01
翌日の朝、忘らるる都では二人の声が響いていた。
「姉さん! 俺と遊ぼうぜ!」
「よっしゃー! かかってこい! 返り討ちにしてやる!」
朝食を終えた、サトミとロッズが火花を散らしていた。
その横では、ヤズーが呆れて様子を見て、マリンは「お姉ちゃん頑張ってー!」と叫んでいる。
そして、カダージュとアズールは朝食の後片付けをしてくれていた。
「ねえカダージュ、遊ぶって言っているけど……」
冷や汗を垂らすアズールは、おずおずしながらカダージュに聞く。
「"遊ぶ"というより"闘う"が合っていると思うよ」
「だよね……」
食器を片付けながら、カダージュたちは二人の様子を見守っていた。
ヤズーはというと、呆れながらもサトミが用意したコーヒーを飲んでいるようだ。
FF連載 SideB
〜進む計画〜
「青い竜の力、見せてやる!」
マントを靡かせて、ロッズと一緒に湖を越えて森の奥へと入って行ってしまった。
「ロッズがあんなにはしゃぐなんて……」
「姉さんの力、なんじゃないか?」
「力? 何の?」
「さあ、でも……人を惹きつける力はあると思うよ……」
「ふーん……」
あまり理解していない様子のアズールは、食器を元の場所に戻し終える。
「後はヤズーの分だけ……あ、コーヒー飲み終えた?」
「もう少しだ」
少しずつ飲んでいたコーヒーを一気飲みしたヤズーは、少し咳き込みしながらコップを渡した。
「一気に飲むことなかったのに……」
「いや、いいんだ」
心配するアズールに、ヤズーは彼女の頭を撫でて言った。
安心したようにアズールは微笑むと、後ろからサトミの声が聞こえてきた。
「悪い、片づけまで頼んじまって……」
「良いんです! 美味しい食事を貰っている身ですから……」
サトミにペコペコと頭を下げられ、アズールも一緒に頭を下げる。
「そうそう、ロッズが話があるんだとさ。行ってやってくれないか?」
「ロッズがですか? わかりました」
タオルで手を拭いたアズールは、サトミに一礼してからロッズの方へと向かった。
サトミはというと、「テメーらちょっとこい!」と言ってカダージュとヤズーを呼んで何かを話しているようだ。
「ロッズ、どうしたの?」
「え、いや……あの‥‥」
口をモゴモゴさせているロッズを不審に思うアズール。
「もう! はっきりと言ってみなさい!」
「お、俺!!」
拳を握り締めて、ロッズはアズールに思い切り言った。
「お前のこと……本当に好きなんだよ!」
「それは知って「妹してじゃなくて、異性として! だから‥‥だから‥‥」
「ロッズ……」
顔を真っ赤にして必死に話すロッズに、アズールは優しく抱き締めた。
「ありがとう……でも、ごめんね」
「‥‥いいんだ! 分かっていたからな!!」
「でも勇気あるよ。ロッズは偉いね」
「へへ……」
ロッズの頭を撫でるアズールのもとに、頭の上に『?』を浮かべたヤズーがやってきた。
「ヤズー、どうしたの?」
「いや、姉さんに『当たって砕けてこい』って言われて……」
「へぇ……そうなんだ」
多分、ヤズーもロッズと同じ用件できたのだろう。
アズールはあえて何も言わなかった。当の本人がよく分かっていないということもある。
そしてカダージュとサトミの方を見ると、あくびをしたサトミが何かを言い残してどこかに行ってしまった。
「あれ、姉さんは?」
「急に眠くなったってさ。昼飯食べたら寝る……だって」
「そりゃあ……ロッズの相手をしてればねぇ……」
「な、なんだよ! 何でこっち見て言うんだよ!」
「誰のせいか、一目瞭然だからだろう……」
それぞれ笑い合うと、四人は目を合せた。
「じゃ……姉さんが寝たのを見計らって、始めようか。まずは子供たちを集めるんだ」
「星痕にかかった子だけ……だよね」
「ああ、早速執行だな」
そしてアズールたちは、カダージュの指示に従い行動を開始する。
ここからミッドガルの距離を考えると、夜にならないと子供たちと話はできそうにないようだ。