02
着いた場所は、思い入れの深い場所だった。
クラウドがバイクの前輪を上げて建物に入った時、サトミはやっとこの場所がどんな所か理解した。
壊れた屋根……懐かしい花の香り‥‥そう、生前のエアリスが大事に花を育てていた場所……スラムの教会だ。
目の前には、箱を抱えたカダージュと手を震わせるアズールがいる。
カダージュは、クラウドたちに気付いて手を振り上げた。
マテリアが埋め込まれているであろうその手から光が放たれ、近くの柱が崩れて倒れてくる。
それを間一髪でよける二人だが、次にきたカダージュの攻撃を避けることができず、そのまま受け止めてしまう。
クラウドの乗るバイク・フェンリルは宙を舞い、花畑は崩れて飛ばされてしまった。
「くっそ……」
腕を痛めたサトミは、壁に背中を預けるようにして立ち上がる。
狂気になっていくカダージュの手から、攻撃をする光が見えた時……奇跡が起きた。
─ザッパーン!!
花畑があった場所から、突然水が溢れ出し教会の中だけ雨を降らせた。
突然の展開き、カダージュとアズールは驚いて教会から離れていった。
「何なんだ……? この雨」
感じた事のない水しぶきの感触に、手の平を上へと向けて呟く。
「サトミ、星痕が消えたぞ……」
「え、マジで!? もしかして私も……?」
クラウドの言葉に、サトミは驚きを隠せないでいるようだ。
そして、ゆっくりと目隠しで使っている布を取り外した。ゆっくりと瞳を開き、顔をクラウドの方へ向ける。
「……久しぶりにクラウドの顔……見た気がするな」
「――当り前だ」
「へへ、だよなー」
エメラルドグリーンに輝くサトミの瞳は、とても嬉しそうに笑っていた。
─行こう、二人とも─不思議な雨が教会内に降る中、どこからかそんな声が聞こえてきた。
クラウドとサトミは、その声に後押しされるように教会を出てカダージュたちの後を追った。
****
最後にたどり着いた場所は、旧神羅カンパニーの跡地。少し離れた瓦礫の上に、二人の人影があった。
銀色に輝く髪を持つ少年と少女……サトミはやっと、カダージュとアズールの顔を見ることができた。
とても久しぶりすぎる、と思いながら……
「僕たち、やっと母さんに会えたんだ!」
「何が始まるんだ?」
嬉しそうに、だが少し怒りが混ざるカダージュの声に、クラウドは静かに問う。
それに答えたのは、アズールだ。
「それなら、母さんが教えてくれるよ……」
「思念体は何も知らない……悲しい宿命だな」
小さく、サトミはそう呟く。
その呟きは二人にも聞こえていたようで、カダージュの目付きが変わった。
「どうせ僕らは操り人形……」
顔を伏せたカダージュの手から、緑の光が現れる。
「昔のお前たちと───」
ゆっくりと手を上げる動きを見て、クラウドとサトミは身構えた。
「同じだッ!!」
その言葉と同時に、カダージュの手から無数の光線が放たれた。
その攻撃を避けて、クラウドはカダージュと……サトミはアズールとの戦闘を始めた。
カダージュと似た武器を持つアズールは、どんどんサトミを攻めていく。
サトミはというと、何も動じずにただ戦いに集中しているようだ……
そんな二組の戦いを、上空から見守る者たちがいた。
二年前、旅を共にしてきたクラウドとサトミの仲間たちだ。