03
「星痕症候群……だよね。このまま死んでもいい―――なんて思ってる?」
サトミが目を覚ます数時間前に遡る。ミッドガルにあるセブンス・ヘヴンの店にクラウドとティファはいた。
二階のにあるベッドに腰掛けて、重く口を開いたのはティファだった。
クラウドから何も返事が返ってこないところを見て、ティファは溜め息をつく。
「やっぱり……」
「治療法がない……」
まるで言い訳をするかのように、クラウドは話す。
「でも、デンゼルやサトミは頑張っているよね」
サトミの名前を聞き、クラウドは顔を上げた。
「ねえ。逃げないで、一緒に戦わない? 皆で助け合って、頑張ろうよ」
どんなに説得をしようとティファが話しても、クラウドが動き出す様子はない。
そしてティファは、小さく呟く。
「本当の家族じゃないから、ダメか……」
「俺には――」
ようやく、黙っていたクラウドが口を開いた。
「誰も助けられないと思うんだ。家族だろうが、仲間だろうが、何も……」
二年前……目の前でエアリスが命を落とし、その数ヶ月前には親友のザックスも命を落とした。
自分が何も出来ない、無力な存在であることに……心を痛めているようだ。
「ズルズル、ズルズル……」
すると、ティファの口から何かを引きずるような音が聞こえた。
暗く頭を下げていたクラウドが、ゆっくりと顔を上げる。
「ズルズル、ズルズル……」
まるで、昔の自分がやっていることのようだと、クラウドは思う。昔のことを、ずっと引きずっている……――
「いつまで引きずっているんだ、と」
自分の心の中で思っていることを言われ、クラウドは声がした方を向く。
そこには、タークスの名コンビ・レノとルードがいた。
「見つからないの!?」
マリンもデンゼルも行方不明になり、心配していたティファがレノたちに問う。彼らに創作の要請を出したのはティファで、彼らはその現状報告をしにやってきたところだろう。
「昨日、サトミに電話して目的地がはっきりした。そん時、敵さんたちと一緒に食事を共にしていたぞ、と」
「サトミらしいな」
クスッと、ルードが笑う。
「サトミの話だと、たくさんの子供達が忘らるる都に向かったそうだ。あそこは……奴らのアジトだ」
ルードの話を聞き、クラウドは「頼む」と言ってベットから立ち上がった。
「俺はルーファウスと話してくる」
「逃げないで!」
部屋を出て行きそうなクラウドを、ティファは必死に呼び止める。
「分かるよ。子供達を見つけても、何も出来ないかもしれない。もしかしたらまた、取り返しのつかないことになるかも……それが怖いんでしょ?」
焦って早口で言うティファ。クラウドはただ、聞いているだけのようだ。
「でも、もっと今を……色んなことを受け止めてよ。重い? だって仕方ないよ、重いんだから。一人で生きていける人以外は我慢しなくちゃ。一人ぼっちは嫌なんでしょ? 出ないくせに……電話は手放さないもんね」
最後のティファの言葉に、クラウドは口を紡ぐ。図星でしょうがないのだろう。
「――アジト、お前が行けよ、と」
ずっと話を聞いていたレノとルード。レノはそう言い残し、部屋から出ようとする。
「お前は行かないのか?」
クラウドの言葉に、レノは足を止めた。
「サトミの事なら大丈夫だぞ、と。俺、アイツを信じてるからな……」
それだけ言い、レノはルードの後を追うように部屋を出たのだった。