02
「悪い、片づけまで頼んじまって……」
「良いんです! 美味しい食事を貰っている身ですから……」
食器の片づけを最後までしてくれたアズールに、サトミはペコペコと頭を下げて礼を言う。
対するアズールは、少し困った表情を浮かべながら手を横に振っていた。
「あ。そうそう、ロッズが話があるんだとさ。行ってやってくれないか?」
「ロッズがですか? わかりました」
タオルで手を拭いたアズールは、そのままロッズの方へと向かったようだ。
「カダージュ! ヤズー! テメーらちょっとこい!」
そしてサトミは、手をヒラヒラさせながら二人を呼んだ。
「なあヤズー、単刀直入に聞くけどさ……」
ビシッと指され、ヤズーはビクッと反応する。
「アズールちゃんのこと、好きか?」
「勿論」
なんの躊躇もなしに言うヤズーの言葉に反応するカダージュ。
「それってさ、一人の女性として、なのか?」
「ま……そうなるかな。まだハッキリしてないし……」
曖昧な返事に、サトミは溜め息をついた。
「お前も当たって砕けて来い。マジ頼むから」
「?」
首を傾げるヤズーを横に、サトミはカダージュと向き合う。
「お前は嫉妬か?」
「当たり前だろッ!」
そっぽ向いて言うカダージュに、サトミはクスッと笑って話した。
「少しは相手の事も考えろよ。誰よりも愛おしいと想うのなら……尚更だ」
「――相手の事……か」
グッと握りしめる手をゆるめて、カダージュはポツリと呟く。
「そう、想い人であると同時にアズールちゃんは一人の人間なんだぜ。だから、相手の気持ちや考えていること……少しでも耳を傾けてみたり、感じてみろよ。同じ位置・同じ目線からいろんなモノを見渡してみろ。世界が広いのと同じくらい、気持ちも広いって言うからな」
ポンッと頭を撫でてやってから、サトミはあくびを一つした。
「私、昼食済ませたら寝る。ロッズと闘って疲れたからな……」
遊びと称しているだけあって、相手はかなり全速力で挑んできたのだ。そんな奴の相手をしたとなると、体力がかなり消耗されているのは仕方のない事。
「そう、分かった……」
その後、昼食を済ませたサトミはそのまま泊った部屋へと移動した。
この時点で、カダージュ達がリユニオンする為の計画が進んでいることに……サトミは知る由もなかった。
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「ん……ヤバ、かなり寝てたみたいだな……」
あれから数時間後、サトミは目を覚ました。
窓を開き、自然の風に当たっていると……何人かの子供の声が聞こえてきた。車に乗せられているようだ。
風がひんやりと冷え切っていることから、今が夜だと言う事が分かる。
その風に乗せられて、数人の子供の声と車がやってくる音が耳に入ってきた。流石のサトミも、寝ぼけてるとは言え異様な音に反応して見えない瞳に力を込める。
「こんな時間に子供を連れてくるなんて……何考えてんだ? アイツら……」
ハンガーにかけたコートを羽織り、サトミは窓から外へと出た。
森の中、木から木へと移動していると、近くの木に立ち止まる。
風と一緒に、カダージュの声が聞こえてきたからだ。
「僕は母さんから、特別な力を授かった。人間を苦しめる……この星と闘う為の力だ」
「マジでアイツら……本当に何考えていやがるんだ……」
手を握り締め、サトミは森の奥へと進んでいった。