02
それが、気配を感じ取れなかった新手の持つ武器だと気付くのに……それほど時間はかからなかった。
自分としたことが、完全に彼の気配を察することが出来なかった。
「カダージュッ!」
ヤズーと呼ばれた男は、サトミの後ろに立つ男の名を口にする。
「テメェ……」
「今度はグリーンか……姉さんの髪の色って、見る度に変わるね」
サトミの髪を優しく撫でながら、カダージュは言う。
少し間を空けて、サトミは武器をしまった。
「? 姉さん……?」
「2対1で勝てる気しないからな、それに……あまり動きたくないんだ」
腹減ってるしな、とサトミは心の中で呟く。
ヒーリンから出てから、サトミは一食も口にしていないのだ。
「……良い判断だよ。姉さん」
首に突きつけられた武器を下ろしてもらい、サトミはホッと胸を撫で下ろした。
「で、人質に逃げられたみたいだね」
「ああ、でも姉さんが来てくれたから……」
「結果オーライ、だね」
「………は……?」
淡々と話す二人の会話を聞き、嫌な汗が流れて行くのを感じた。
この場から離れないと、どうやらとんでもない事に巻き込まれかねない……
「おい、まさか……私が彼らの代わりに人質になれと?」
「よく分かってるじゃん! 姉さん」
「はぁ!!?」
カダージュの明るい言葉に、サトミはガックリと肩を落とした。
―こんな展開になるんだったら、忘らるる都なんかに向かうんじゃなかった……!!
そうサトミは、心の中で叫んだのだった。
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「サトミお姉ちゃん!!」
バイクを押しながら、二人に監視されて……サトミは忘らるる都の泉の畔に着いた。
少し離れた場所から、自分の名を呼びながら走ってくる少女の声が聞こえる。
その声を聞き、サトミはパァァァァと明るくなった。
「マリンじゃないか〜〜〜〜!!」
お互いに抱きついてハート乱舞をぶちまける二人。
その様子を、周りにいた四人は呆れて見ていたとか……
「マリンも捕まっちゃったのか〜、怪我してないか?」
「大丈夫だよ!」
マリンがにっこりと答えた時、くぅ……と何かが鳴る音が聞こえた。
「マリン?」
「えへ、お腹すいちゃった」
お腹を押さえて、マリンは照れながら言った。連れ去られてきたのだ、マリンの緊張が無くなった証拠だろう。
目は見えないが、時刻はもう夜……のはず。夕食をまだ済ましていないサトミも、お腹を押さえた。
そして―――……彼女はとんでもない判断をしたのだ。
「よし、夕食作って食べよう! 6人でな」
「「「「え!?」」」」
サトミの後ろに立つカダージュたちと、マリンの後ろにいるアズールたちが声を揃えた。
当たり前だ。ここは敵が拠点としている場所……いつ襲われてもおかしくないのだ。
マリンを人質に取られている状況は変わらない。なのに何故そのような結論に達する事が出来るのか。カダージュ達は不思議で仕方がないようだ。
「腹が減ってはなんとやら! あんた達も夕食済ませてねぇだろ?」
返事は……ない。サトミはニヤリと笑った。
「なんだなんだ? 返事がないって事は、図星か?」
「わ、悪かったな!」
アズールの隣に立つ男が、子供のようにそう叫ぶ。
「アハハハ! 素直で良いぜ〜。さて、カダージュと……ヤズーだったな。バイクに積んである荷物を運んでもらおうか。アズールちゃんと……」
思わず首を傾げてしまうサトミ。
カダージュ一味は全部で四人。そのうち三人の名前は聞いたことがあって覚えていたが、最後の一人の名前が分からないのだ。
「ロッズって言います。姉さん」
「そうか。ロッズ、だな。じゃ……アズールちゃんとロッズは薪を集めてもらおうか」
「あ、えっと……わ、分かりました。行こうか、ロッズ」
「おう」
アズールの言葉に救われたサトミは、「ありがと」と小さく呟く。
「ねえ、何を作るの?」
サトミの服のすそを掴んでいるマリンが問う。