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「あんの馬鹿白蘭!」

「貴様は何度その言葉を叫べば気が済むんだ」

「何度でも叫んでやるよ馬鹿野郎!!」


ウガーー! と暴走も同然に叫ぶ私に、慣れている永四郎は「落ち着きなさいよ」と優しく声をかけてくれた。

それに賛同するようにりっちゃんや跡部君も加わり、ようやく私は深呼吸をして落ち着きを取り戻す。


「……んで、白蘭の話によるとココに来たのはカゲッちゃんだけじゃないでしょ?」

「ああ、我が妻と"もう一人の俺たち"だな」

「は? どういうこと??」


言っていることの意味が分からなくて首をかしげながら目を見開かせて驚いた。何故なら、目の前に"ここの時代"のカゲッちゃんがいるからだ。

対する灯さんことりっちゃんはというと、頭上に疑問符を浮かべているみたい。

知らなくても同然だから、私はあえて口には出さないでおくことにしよう。


「今回は話し合いに首を突っ込もうと思ったが、気が変わった。俺の相手をしろ、秋穂」

「はぁぁああ!? 相変わらずの俺様暴君め! 相手になってやるよチクショー!」


チッと舌打ちしながらも、私はその場から立ち上がり剣を構えた。

カゲッちゃんはというと、面白そうに笑みを浮かべては広い場所へと移動する。

私と戦う気満々な様子なのは誰が見ても分かるわけで、私は得意の武器を構えて対峙した。

そんな私達に、他のメンバーは呆れに似た息を漏らしているなど……私は気付いていなかった。




07章:過去と未来の出会い




*Side 木手*

とても嬉しそうに話しながら、愛用の武器を手に中庭で刃を交え始める二人。

ああなっては我々の声など聞こえないでしょう……そう思いながら秋穂たちを見つめていると……


「あーあ、結局こうなっちゃうのね」


少し後れて聞こえてきた女性の声は、中庭へ顔を向けながらポツリと呟いた。


「ホンット千景らしいよ。アナタもそう思わない?」

「はい。セカイは違えど、こうして見ると不思議な感覚ですね」


微笑みながら聞こえた女性の声に、新撰組の誰もが彼女の顔を見て驚きを隠せないでいるようだ。

まあ、無理もありませんね。ここのセカイに住む"彼女"ですらも驚いて硬直しているのだから。

彼女……未来からやってきた灯さんの背後には、我々が見慣れている中華風の上着に黒いロングズボンを着る女性が現れた。

彼女とは初対面の筈。なのに、少しだけ懐かしいような感覚を憶えるのは何故だろうか?


「はじめまして、私は未来からやってきました『桜花灯』と言います」


俺の想いを横に、未来からやってきた灯さんは膝をついて頭を下げた。

隣に立つ女性もまた、慌てながら彼女の横に座る。


「私は天野千華……パラレルワールドに存在する"桜花灯さん"と認識していただければと思います」

「は? どういう意味だよ!!」


彼女……天野千華と名乗った彼女の言葉に、俺は一人勝手に理解する。

パラレルワールド……つまり、彼女は白蘭さんの手引きによって呼ばれてきたということだ。初対面だと思えなかったのは、恐らく灯さんと似たような雰囲気を感じたからに違いない。

不思議そうに声を上げたのは藤堂クンのようで、千華さんは少し困り果ててしまったようだ。


「ん〜、どう説明すれば良いでしょうか……」

「まあ、先程の貴女の説明で大体理解できました。後は我々が説明しますので、ご心配は無用です」


ココとは違う別世界の話など、大抵の人は理解してくれない事柄だから。

俺の言葉を聴いて、彼女はホッと安心したような息を漏らした。説明など不要であることを理解してくれたようで、話す手間が省けたと判断したからだろう。


「パラレルワールドはあながち間違いじゃねーだろう。辿ってる道筋が類似してるけどな」


そう言葉を発したのは跡部クンだ。腕を組んで話をすると、クスクスと未来から来た灯さんが笑い出す。


「私も、千華さんも……共通の独占欲が強い殿方に見初められただけですよ。ね?」

「!?」


唐突な言葉に、ボッと彼女は顔を赤くした。異世界とは言え共通の男からの愛を受け、それで心を満たしている。

そんなことなど、誰に言われなくても彼女の反応一つですぐに理解できた。現に、千華さんの後ろに立つ彼……風間千景もまた、クツクツと笑みを浮かべている。


「千華、ここで出す答えなど『応』以外に何がある?」

「それなんて、『Yes or はい』しか残されてないようなものじゃないですか!」


うわーん! と嬉し恥ずかしな声色を出しながら両手で顔を覆う。

当の本人はというと、外来語に免疫がないらしく不思議そうに首をかしげていた。こんな調子で話が続くとなるとラチが空かない。そう思ったのは俺だけではなかったようだ。


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