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池田屋事件から、数ヶ月経つ。私は普段と変わらない生活を送っていた。

まあ、変わったところがあるならば……時々赤也君と一緒に新選組の屯所に遊びに行ってるって事くらい。

総司君や平助君を皮切りに、新選組のメンバーと顔なじみになっているのだ。

この人達が、本当に灯さんと千鶴ちゃんという子を苛めているとは思えないのが正直な気持ちである。

新選組の評判、京都の治安など、大体の状況が把握できてどう行動を起こそうか悩んでいる時だった。


「秋穂、今から新選組の屯所へ行く。お前も来い」

「…………は?」


不抜けた声を漏らしてしまった私を横に、いつもの俺様オーラ全開のカゲッちゃんがそう言いのけてきた。

今思えば、この行動をきかっけに物語が大きく動く事を……今の私は知る由もない。




06章:鬼と人間の対立




「い、今から行くの!?」


ちなみに、今は夕暮れだ。

そろそろ夕食の準備をしようと永四朗や跡部君たちと相談しながら準備に入ろうとした矢先で飛んできたカゲッちゃんの一言。

なんでもっと早く言わないかなぁ〜この人は!


「今からでないと意味がない。早くしろ」

「ちょっと待てやゴルァ!」


一方的に話してから去ろうとするカゲッちゃんに叫ぶが、私の声が聞こえていないのかどんどん廊下の先へと歩いて行ってしまった。


「いきなり切り出してきやがったな、何考えてんだアイツ」

「すまねぇ、風間の野郎……相当焦ってるみてーなんだ」

「あ、キョンじゃないか。焦ってるって、どういこと?」


キョンの言葉に首を傾げると、コホンとアマやんが咳き込んだ。


「最初から説明しましょう」


アマやん曰く、池田屋事件以降……私や永四朗達が京都を中心に情報を収集している中、天王山や二条城に向かい新選組の人達と対立したのだそうだ。

その時に灯さんと出会い、彼女が同胞―鬼―であることを知ったらしい。

カゲッちゃんは一目見たあの池田屋事件の時からずっと彼女に目を付けていたみたい。流石カゲッちゃん、未来の奥さんをいち早く捕えたようだね。

それと、灯さん以外にもう一人、鬼と呼ばれる子がいたらしい。

名前は、雪村千鶴ちゃん。池田屋事件の時に、総司さんと平助君が口にしていた名前の子だ。

そこで、土方さんや千鶴ちゃんの話、二条城で出会った新選組の雰囲気を見て判断したことがある。


「――それが"虐め"。灯さんと千鶴ちゃんが標的になって、暴力を受けているのではないのか……ってことか」

「そうです」


苦々しい表情で話をしてきたアマやんは、とても思いつめているようだった。

同胞が人間から手を上げられているのだ、助けたいと思うのは当たり前だろう……


「風間にとって、アナタは悩みを打ち明けやすい人間だからでしょうね。同行して欲しいというのも、自身の持つ"悩み"を解決する糸口を見出してくれると思っての行動でしょうね」

「まあ……"何でも"やってるからね、頼ってくれるのは嬉しいんだけど、もっと面と向かって話してくれれば良いのに」

「ね、秋穂は『何でも屋』なんだし」

「ねー」


顔を合わせて一緒に首を横に動かす私とりっちゃんに、アマやんとキョンは頭上に疑問符を浮かべていた。


「じゃ、早速行きますか。りっちゃんと跡部君も一緒に来る?」

「乗り掛かった船だ、一緒に行くに決まってんだろ。アーン?」

「ですよねー!」


ニコッと笑いながらそう話した私は、身につけている法被をひっくり返して赤い鳥が描かれている方を表にした。

リバーシブルって便利!


「じゃあ、精市君やうおちゃんたちに声かけてこようか。永四朗」

「そうですね……」


その後、私たちはカゲッちゃんの用で動く事を伝えたら……精市君やうおちゃんは快く「いってらっしゃい」と声をかけてくれた。

虐めが絡んでいるとなると、止める必要がないからだ。

赤也君も一緒に行くと叫んでいたが、源一郎さんの鉄拳により黙ってしまったのは……また別の話になる。


 


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