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「ただいまー!」

「お帰りなさい、夕食いる? 今からなんだけど……」

「お、丁度良いね! 頂くよりっちゃん!」


真っ暗になった夜道を歩き、私たちは無事に家へと帰る事が出来た。出迎えてくれたりっちゃんがいつものように笑顔を向けて話してくれたんだけど……


「あれ? お客さん?」

「うん、後で紹介するね……」


永四朗たちは先に奥の部屋へと行っちゃったから、この玄関にいるのは私と千景さん達だ。りっちゃんに紹介しようと口を開こうとしたら……


「おい秋穂、オマケがいるなんて聞いてねーぞ? アーン?」

「ほう? 人間の分際で図が高いではないか」


私の言葉を遮るようにやってきたのは、言わずもがな……跡部君だ。彼の態度が気に食わないのか、眉間に怒りマークのような青筋を浮かべながらワナワナと震えて話す千景さん。

ああああ……! ここで争いとか、やめてよね……!!


「もう! 景吾、そんな喧嘩腰で話しちゃダメだって言ったじゃん! 秋穂が連れてきたって事は、何か理由があるんだよね?」

「流石りっちゃん! よく分かってらっしゃる!!」

「長い付き合いだもん」


そして、バチバチと火花を散らす二人を宥めながら、私たちは広間へと向かうのだった。




04章:居候がやってきた




広間に足を踏み入れると、そこには食料調達メンバーが一列になって座っていた。今から夕食を食べようとしていたみたい。皆の前には、料理が並んでいるから。


「秋穂遅いぞ! 道草か?」

「まあそんなところ! そうそう、紹介したい人がいるんだけど……」


手招きをして三人を広間に入れると、何人かが彼らの顔を見て反応を示した。先日の依頼を遂行した時、隠しカメラの映像を見ていた人がほとんどだからね。驚くのも無理はないか。


「それでは、こちらは風間千景さん。風間家の鬼の統領で、嫁探しの手伝いをしてくれって私に依頼してきた人ね」

「おい、そんな説明でこいつらは信じるのか?」


眉間にしわを寄せて話しかけてきたのは匡さんだ。


「なんくるないさー! 皆、同僚の人達だからね。細かいことは大体察することができるから問題ない」

「そう、か……」


半信半疑な状態だったけど、とりあえず皆に彼らの事を紹介した。千景さんを筆頭に、天霧久寿さんと不知火匡さんと名前を名乗って貰いながら少しだけ交流を深める事ができてホッとしたのは言うまでもない。

彼らを居候人として向かえる事を話すと、大半が賛同してくれたけど……


「本当に大丈夫なんですか?」


中でも若君だけは、心配そうに私と千景さんを交互に見ながら用心深く問うてくる。

彼らは、私たちが"未来"から来たという事を知らないから。だから知られる事がよくないのだろうと、そう思ってくれてるんだろう。


「まあ……ここに招き入れた時点で、暴露する気満々だから問題ないでしょ」

「いえ、結構問題ある気がして仕方ないんですけど」


こんな人がトップで大丈夫なのか? って視線を向けてくる彼に、私はいつものようにケタケタと笑う。

それに、B.B.Cのトップは跡部君でしょ? 私はどちらかと言うと、跡部君とりっちゃんの補佐をする役割を担ってるわけで……


「一体、何のお話を……?」

「あー……その話をする前に、私たちの調べた情報を共有させてね!」


申し訳なさそうに久寿さんに話をして、私たちは食事を口に運びながら本題に入った。


「現在は文久四年5月28日。新選組の知名度は日々上がって行ってる模様。今日も見周りに動いている人達を見かけたしね。あと、これは風の噂なんだけど……」


半信半疑だった新選組内で起きている苛め問題を口にすると、反応するように食料調達組が口を開いてくれた。どうやら彼らはその現場を目撃し、止めに入ったんだそうだ。

まさか、大通りに面している場所で暴力沙汰を起こしているとは……これじゃあ正史通りにいかない。

白蘭が依頼を出した理由が、なんとなくだけど分かった気がした。これは放っておいたらいけないね……!


「ちなみに、被害者の名前は分からない? こっちでも対策立てようと思うんだけど……」

「雪村千鶴さんと、桜花灯さんですよ」


ん〜、と悩む私に答えてくれたのは蔵人兄さんだった。

……って、ちょっと待って!

 


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