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「ねえ秋穂チャン、タイムスリップしてみようとか思わない?」

「は、はい?」


そう、この大がかりな物語の始まりは……こんな突拍子もない白蘭からの一言によって始まりを告げた。




01章:事の始まり




白蘭からの依頼を無事に解決させてから、数週間の時が流れた。ボンゴレもビルは完全に修復し、ミルフィオーレに助力を貰いながらなんとか活動を再開している。

全ての元凶である金銅さんの亡骸は、裏で丁重に埋葬したんだとか。詳しい話は聞かないようにしているから、細かい事までは分からないけど。

そうそう、冒頭の話をしないといけないね。

事件も無事に解決し、私達Bloody Bird Companyのメンバーが、一ヶ月後に日本へ帰国する事が決まった日の事。ミルフィオーレのボスであり、私の親しい依頼人の一人でもある白蘭に呼ばれて、彼の部屋へ入った途端に言われた言葉。

ニーッコリといつもの笑みを浮かべている彼の意図が分からず、私はただポカーンと目を丸くするほかリアクションが出せないでいた。


「な、何故タイムスリップなんですか? 意味が分かりません」

「そうですよ、白蘭さん。しっかり説明しないと……」


呆れて溜め息をついているのは、前回の騒動で救出した星野さんことセイちゃんです。現在、白蘭と式を挙げた後は彼と共に仕事をこなす日々を送っているようだ。


「ん〜、僕自身もどう説明すればいいのか分からなくってさ〜」

「はぁ……」

「でもこれだけは言えるよ。厄介な事件が起きている、てね」


目を細める白蘭に、私も同じように目を細めて小さく身構える。まったく、彼の問題はつい先日解決させたばかりだと言うのに……またなにかしら起こしたんだろう。

続きを聞こうと口を開くけど、何人かメンバーを揃えてから再度部屋に来るよう言われてしまった。半ば強引に部屋から追い出された私は頭を悩ませる。そもそも、厄介な事件ってなにさ!


「白蘭って、たまに強引に話を進めるよね〜」


ハァ、と呆れた溜め息をついている暇はない。とにかく、私の独断で何人か人を集めてみる事にした。今のところ、パッと頭に浮かんだメンバーだけでも声をかけてみようかな。


「……よしっ」


握り拳を作り、私はミルフィオーレ本部の廊下を走りだした。




***



「ん、やっぱりこのメンバーにしたんだね。予想通りで良かったよ」

「それで、我々に何の話をするおつもりで?」

「ウン。とっても大事なことなんだ」


あれから数分後、私を含めた10名が、白蘭の部屋に集まった。

最初に言葉を発したのは蔵人兄さん。そして、彼の横に立っているのは跡部君とりっちゃん。彼らの後ろに控えるようにして経っているのが、永四朗・凛・裕次郎・精市君・雅治・マリーアさんだ。

ニコニコと変わらない笑顔を向けながら、白蘭は二冊の本を私達の前に差し出した。全く同じ表紙みたい。


「皆はさ、新選組って知ってる?」

「おお! あの歴史モノとかで聞くあれかー!」


目を輝かせながら凛がそう反応した。

新選組……それは、幕末から明治初期にかけて活躍した人数の少ない隊士達の集まりの事を指している。局長の近藤勇を始め、土方歳三に沖田総司。斎藤一、藤堂平助、原田佐之助、山南敬介……他にも多数存在している。

彼らの活躍は、日本だに留まらず海外からも多く注目されているほど、儚く尊い生き様だと言われているのだ。


「こっちの本は、パラレルワールドにいる僕から貰った本。そっちはこの世界に存在する本……まあ、いわゆる歴史書だね。ちょっと見比べてみて。話はそれから……」


そう言われて手渡された二冊の本。最初疑問符を頭上に浮かべていたけど、とりあえずペラペラとページをめくっていく事にした。

本には、江戸時代初期から明治時代の部分がピックアップされて細かく書かれている。昔の細かい出来事や、この事件の裏側では誰が活躍していたのか……私達が知らないような歴史の真相が書かれているんだけれど……


「ッ……!」


二冊目の本……私達の世界に存在する歴史書を手にして読んで行くうちに、私は一つの"違い"を見つけてしまった。それは、一緒に読んでいた永四朗とマリーアさんも同じようで、小さく目を見開いているのが分かる。


「どういうこと? どうして……」


新選組の名前が、出てこないの?

そう小さく呟く私の声に気付いたのか、白蘭はニッとお得意の笑顔を向けて口を開いた。


「よく気付いたね♪ 秋穂チャン」

「う、嘘!?」


凛は違いに気付かなかったようで、私の手から本を奪うようにして持って行って二冊並べて見比べ始める。そんな彼を横に置いて、私達は話を進める事にした。

 


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