04
「灯さんが統領とか凄すぎるんだけど! すごく感動!!」
「なーんでこんなトコで感動すんだよ。意味わかんねー」
この際、キョンの突っ込みはスルーの方向で良しとしよう。
「統領って事は、一つの地域を治めているトップだな」
「風間さんもそのようだし、だからあの時強かったのかもね」
コソコソと話すりっちゃんたちに、私は心の中で大きく頷いた。
彼女たちの話す"あの時"というのは、ボンゴレ本部での闘いのことを指しているんだと思う。
あの時、崩壊している中とは言え盗聴用のカメラは機能していたみたいだし、そこから二人は戦いの一部始終を見ていたはずだから。
「――んで、お前らは何の目的で来たんだ?」
「ん?」
紫の服を着た長髪の男が、私やりっちゃんを不思議そうに見つめてきた。
特にりっちゃんと跡部君は、彼らと面識があるからね、無理もないだろう。
「わったー、新選組の虐め問題を解決しんかい来ちゃやっさーけだしよ」
「お前たちは部外者だろう、俺たちの内情に口出しをする筋合いはないはずだ……」
冷静に話をしてくる男に、少しだけムッとなる。まあ……言われてみれば、彼らからすると私たちは部外者だ。でも……
「私たちは、カゲッちゃんから依頼されてきています。それ以外にも、彼らには大きな借りがありますから!」
それを返す時まで、私たちは彼らの手助けをする。そう決めているの!
そう話し、双方共に緊迫した空気が流れる……これじゃあ、しっかりと話ができないし、話が進まない!
そう思った時だった……
―ランッ♪
「な、なんだ……?」
この場の空気とは不釣り合いな、陽気な電子音が響いてきた。
しかも、あの時私のパソコンから聞こえてきた音と全く変わらない……
―ランッ♪ ランッ♪
「秋穂、これって……」
「うん、多分合ってると思うよ。りっちゃん……」
あまりの異様な音に周りは慌てているようだけど、聞き慣れている私たちからすれば異様ではないのだ。
冷静な私たちに疑問を持つ千姫さんとカゲッちゃんは何か気付いた節があるのだろう。
この音の持つ意味、そして私たちが騒いでいない根本的な部分を……
―ランッ♪ ランッ♪ ビャックラーン♪
『やっほー♪ 秋穂チャン、今平気?』
「平気じゃないので、単刀直入に用件だけ話して下さい」
私の身につけているブレスレットに装着されているボタンを押すと、そこからレンズと共に白蘭の映像が映し出された。
流石高性能の技術を施した機械だ、次元を越えてこうして会話できる事に驚きを隠せない。
まあ、周りにいる人達は驚きすぎて何が起きているのか分からないでいるようだけど……
『分かった♪ こっちの準備は完了したよ、必要な情報を持って三人を向かわせるから』
「分かりました、精市君たちには……」
『ダイジョーブ! 前もって連絡入れたから、きっと今準備してると思うよ! あと、秋穂チャンにお客様ね!』
「客?」
『ウン♪ 一時的に転送したからね、用事が終わればすぐ帰るって言ってたから……』
―ガラッ!
楽しそうに話す白蘭の言葉と、勢いよく襖が開かれるのは、ほとんど同じだった。
そして、そこに立っている人物を見て私は目を見開かせる。
『――じゃ、そういうことだから♪』
「ちょ、待てや白蘭ッッ!!!」
まさかの丸投げ状態で通信を切る彼に、私はワナワナと震える。
当たり前だ! あの白い悪魔め、空気読めない人だなーー!!
「ハッ! 久しぶりだな?」
「ホンットにね、"コッチ"の世界のカゲッちゃん」
「フンッ」
そう、彼がこの世界に飛ばした一時的に滞在する人物……
それは――紫の洋装を着る、私たちの世界に住んでいる"風間千景"その人だったのだ。
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