04

 
「簡単な話よ! より良い子孫を残す為に、純粋な血筋の女鬼を探してるって事! 人間との交流が増えた現在、鬼と言っても混血の血筋を持つ鬼が多く存在するようになったってところね〜」


自身で頷きながら話すマリーアさんの言葉に、目の前にいる三人は目を見開いて驚いているようだった。当初の目的を、ここまで暴いてくるとは思ってもみなかったのだろう。


「だけど、女鬼だから――という理由で子孫を残す為という、まるで道具のような発言をするのは気に食わないですね」

「女鬼は力がない代わりに、純粋な子孫を残すのに貴重な存在だ。それの何処がおかしいというのだ?」

「自分、可哀そうな奴やなー」


永四朗と千景さんの言葉を聞き、ずっと口を閉ざしていた侑士君がポツリと呟いた。彼の言葉に真っ先に反応したのは久寿さんだ。


「それは、どういう意味ですか……?」

「鬼だろうが人間だろうが、女っちゅー生き物は誰かに愛し・愛される事で輝きが増すし、大きな力を持つんや。その"愛"を知らないやなんて……風間はんはかわそうな奴やと思うただけやで」

「あーら、アナタの口からそんな言葉が出てくるなんて思わなかったわ〜」


感心するように話すマリーアさんに、ムッとなりながら侑士君は言葉を続ける。


「よう考えてみ? 跡部と鈴ちゃん、勿論木手と秋穂ちゃんを見てれば一目瞭然やないか」

「確かに……秋穂がいるから、俺はここまで強くなれたと言っても過言ではないですから……」

「それはちょっと嬉しいかも……! ま、私も同じだけどね!」

「ま、相思相愛なんて言葉……君たちにあるようなものだしね」


クスリと笑いながら精市君が続けるように話をする。私と永四朗、跡部君とりっちゃん、凛とうおちゃんだって同じことが言えるだろう。

相手を想い、お互いを支え合って生きていく事は、とても大変なことなんだ。世の中には、女性を道具のようにしか考えていない男だっているだろう。

だからかな、私の目の前にいる千景さんには……女鬼という存在をただの"道具"として見てほしくないんだ。


「えっと、話が脱線してしまいましたが……ある条件を呑んでくださるなら、千景さん達の依頼を受けても良いですよ」

「? ある条件、とは?」


私の言葉にニッと笑う千景さんは、頭の上に疑問符を浮かべながら問うてくる。


「簡単ですよ。"愛"を手に入れてください」

「愛……だと?」

「はい! 誰かを愛し、愛される事を知る。それが条件です」


ピッと指を立ててハッキリと言う。大丈夫、彼ならできる。あの時、傍にいた彼女……灯さんと出逢うことができれば……


「誰かを愛し、愛される事を知る……まるで"美女と野獣"みたいだなー」

「お、良い例えを出してきたね! さしずめ、千景さんはビーストってところかな?」

「?」


裕次郎とノリノリになって話を膨らませていると、窓から見える空が青からオレンジへと色が変わっていた。

もう夕方なの!? 時間が経つのも早いなー。手元にある空っぽのうどんの丼ぶりが冷たくなっているのが証拠かも。


「秋穂〜、そろそろ帰りましょう。皆心配してると思うわ〜」

「そうですね。じゃ、帰りますか!」


千景さんから(仮ではあるけど)依頼も受けたし、今後の行動を皆と一緒に話し合わないといけないしね。


「おい、貴様ら住む場所は何処だ?」

「? 昨夜、私達が立ってた場所だけど……」


それが一体どうしたのだろう?

そう思いながら首を傾げると、千景さんはニヤリと綺麗な笑みを浮かべた。なんか、嫌な予感がするのは気のせいかな……?


「決めたぞ。俺は今日から、貴様らの住処に居座る事にする」

「はぁぁ!? じゅんにか!?」

「この俺が済むと言ってるのだぞ? 在り難く思わんか」


口をあんぐりと開きながら呆気に取られる裕次郎に、我が物顔で堂々とした態度を取る千景さん。まさか、跡部君に並ぶ……いやそれ以上の俺様を発揮してくれるとは思わなかったわ……


「あの、どうしてそういう結論になったのか聞いても……?」

「簡単なことだ。気様が気に入った、ただそれだけだ」


そう話す彼は、先程と比べられないくらい輝いていた。何故!?


「秋穂、どうする気でいますか……?」

「ん〜〜……空き部屋はまだあったはずだし、跡部君達と話し合って決めようよ。ま、住まわせる気ではいるけどね!」

「流石秋穂ね!」


手を合わせてニッコリと笑うマリーアさんに、私は頭をかいた。

だってさ、今後の事を考えると少しでも関わりが多い方が良いと思うのさ。


「急な要望に答えてもらい、感謝します」

「いいっていいって、メンバーに話さないといけないからさ……早く行こうか。向こうでお二人の名前含めて、色々聞こうと思ってるんで」

「あ……」

「三人とも、置いてくよ?」


ニッコリと笑う精市君に返事を返しながら、私は久寿さんと匡さんと共に店を後にする。

少し先に歩いて行ってる皆の背中を追いかけながら……空を見上げる。もうそろそろ、夕暮れから夜へと変わる頃だろう。

 


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