02
「白蘭! これってどういう……!!」
「実はさ〜、僕もついさっき気付いたばかりなんだよ」
だから曖昧な言葉しか言わなかったのか……
でも、分かる気がする。白蘭の持つ能力……それはこことは違う別の世界に存在するもうひとりの自分と対話ができること。物を転送するのも同様らしく、パラレルワールドにいる自分から受け取った本を読んで驚きを隠せなかったのだろう。
新選組という組織が、歴史の中から姿を消している……これは見逃せない事実。彼らが歩んだ『侍』の道を誰かの手によって、まるでこの世に存在していなかったかのように、歴史書から姿を消しているのだ。
これは、見逃せない事実。
「まあ、僕からの依頼はただ一つさ。簡単な話、歴史を改変してきてよ。正史通りに話を進めてくるだけなんだけどさ……」
「やしが、なんでやねんやーがウングトール依頼をわったーんかいしてくるんやっさー?」 (だけど、なんでお前がそんな依頼を俺達にしてくるんだ?)
ずっと本の方へと目線を動かしていた裕次郎が、顔を挙げながらそう白蘭に問うてきた。
まあ確かに、この細かい部分に気付けたのはすっごく良い事だと思う。だけど、なんで歴史の改変を私達に頼むのだろう?
「ん〜、なんかね……他人事だと思えないんだよね。それだけ」
「本当にそれだけですか?」
「ウン」
純粋な彼の瞳を見る限り、その言葉に偽りはないみたいだ。折角だし、ここまで話を聞いたんだ……彼の依頼、引き受けようじゃないか。
「……うん、分かった。その話受けるよ」
「お、おい……本気か? 秋穂」
「当たり前やっし! それにタイムスリップするってことでしょ? なんか楽しそうじゃないか!」
「テメェはそれが目的だろうが……」
呆れている跡部君に私は「ハハハ!」と笑いながら返事をする。最近頭を使った事件を解決する事が多かったからね、休むついでにタイムスリップとか……なんか面白そうじゃない?
「羽を伸ばす事を第一条件として、新選組に何が起こっているのか……突き止めに行こうよ!」
「秋穂、本当に楽しそうだね」
「まあね〜! 何事も、楽しんだ者勝ちって言うじゃない?」
勉強も、遊びも、仕事も。自分自身が楽しんで行かないと長続きはしない。キツい仕事が長引いていたと言う事もあり、今の私は羽を大きく伸ばせる時間と空間が欲しかったんだ。
「流石秋穂チャン。宜しくね」
「それで、誰が行く予定なのか……決めないといけませんね」
「ん〜、それもそうだね。ここにいる人達だけでも良いと思うけど……意見聞いて良い?」
小さく首をかしげながら問うてみると、最初に発言したのは雅治だった。
「行先は幕末じゃろ? 俺達は比較的現代人じゃき、古風な奴を連れて行かんか?」
「ああ、真田や柳が適任してるかもしれないね。後で声かけてみようか」
「なら日吉もどうだ? 俺様から声をかけてみよう」
「忍足君とか、良いかな……。ほら、頭の回転速いし医学の心得もあるし」
「お、それはいいね! 行き先で怪我とかしたら手当てに人員が必要になるしね」
でも、本人に聞いてみてからにしようね。
そう私が話すと、りっちゃんは「当たり前だよ」と言って笑った。
その後、私達の話し合いをした結果……誰と一緒に行こうか、リストアップしたから経過報告も兼ねてお話するね。
最初に目的地である過去へと向かうメンバーは、私と永四朗に跡部君やりっちゃんを筆頭に……精市君・源一郎さん・雅治君・赤也君・うおちゃん・忍足君・蔵人兄さん・マリーアさん。
そして後に続くように、貞治・柳さん・はじめ君・若君の四人とボンゴレから雲雀さんと骸さんと山本君が来ることとなった。B.B.Cメンバーには電話で声をかけたら、皆の同意を貰うことができたんだ。
ボンゴレ側は、ミルフィオーレの回線を使って連絡を取ったら内容を言う前に賛同してくれたよ。白蘭や私に対して怯えている節もあったけどね……
「じゃあ、正チャンやスパナクンに頼んで早急にタイムスリップできる装置の制作をするよう声かけとくよ。早ければ明日の夕方には出来上がるだろうし」
「流石ミルフィオーレクォリティ! 頼りにしてます!」
それだけ言い残し、私達は白蘭の部屋を後にした。早くて明日の夕方には、もうこの地ではない別の場所にいるんだ……
そう思うと、子供のようにはしゃいでしまうな。
「さーてと! 簡単に準備しようか」
「準備ってあびてぃも、ぬー用意すればゆたさんんやっさー?」 (準備って言っても、何を用意すればいいんだ?)
「ん〜、着る物とか? 江戸時代の日本人は着物が主だからね。何着か用意する所から始めようか……」
凛や裕次郎たちと共に、私と永四朗はミルフィオーレの建物を後にした。
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