01


「変な人と出会った?」

「そうッス」


私達がイタリアに着いてから二週間近くが経とうとしている。今は夕方。ボンゴレ本部からの誘いと言う事もあり、私達はボンゴレファミリー守護者たちと共に夕食を共にしていた。

ミルフィオーレに手配してくれたマンションには事前に連絡を入れたから大丈夫だけど、白蘭に至っては凄く心配された。今の彼らは何をしでかすか分からないからって言われちゃったな。

でも、こうして友好的に接してきているから特に心配する必要はないと話して置いたけど……後で何か言われそうだなぁ……。心配と言えば、お酒の飲み過ぎで倒れないかが心配な人物が若干数名いるのが気がかり……

そして、冒頭の一言は赤也君のポツリと呟いた言葉を聞いて疑問符を浮かべた私の言葉でもある。


「はい、話すと少し長くなるんッスけど……」


モグモグと食べ物を頬張りながら赤也君が順を追って話をしてくれた。



**



いつものように綱吉君の部屋を起点に分かれて情報収集をする為に、一旦解散して各々で行動してくれと話をしたんだ。

その時、赤也君は単独行動をしていたんだって。その時に出会ったのが、雲の守護者である雲雀君。そして、彼の後ろにもう一人立っていたんだとか。

その人物は、黒い服を着た赤髪の男だったらしい。


『知り合いッスか?』


という赤也君の言葉に


『いや、偶然顔合わせをした赤の他人だけど』


と、サラリと特に悪びれもなく話す雲雀君に目をパチクリさせたんだとか。

そして、その時に顔を合わせたその男の事だけど……


「なーんか、初めて逢ったような気がしないんッスよね〜」

「へー、赤也がそう言うのって珍しいね」


話を聞いていた精市君はそう言いながら、フォークを動かして私達の会話に耳を傾けている。

他のメンバーは、個々に話したい人に声をかけて同席してもらっているようだ。ただ、その彼らの周りをまるでハエの如くうろついている金銅さんが視界に入っては妙な顔つきをしているけど……


「後で詳しく雲雀さんに聞いてみるね」


そう口を開いたのは、綱吉君。私の座っている席にいるのは、綱吉君・精市君・赤也君・永四朗・私の五名だ。


(まあ、聞いたところで話をするような人じゃないでしょう……)


初めて顔を合わせただけなんだけど、なんとなく『唯我独尊』とかが似合う一匹狼の印象を持った雲雀さん。

後で、個人的に話をしてみたいと思った……




06章:不思議な一味




「流石イタリア……味が独特すぎるわ……」

「大丈夫ですか?」

「う、ん。だいじょーぶ、だいじょーぶ……」


食事も大体済ませ、残るはデザートだけとなった。心配そうに声をかけてくる永四朗にお礼を言いながら大丈夫、と何度も口にする。用意してもらったワインに口をつけて、フゥと一息つく。

あまりこういうイタリアンな食事を取ったことがないから、少しだけ胸やけを起こす。まあ、今だけだからあまり気にしてないんだけどね。


「あのぅ〜、一緒になっても良いですかぁ〜?」


10年前に耳にしたことのある猫撫で声に、思わずピシッと固まってしまった。

嗚呼、拒絶反応が起こってる……!!


「ああ、構わないよ。挨拶はここで最後かい? 愛美」

「そうなんですよぅ〜!」


クネクネと無駄な動きを見せながら永四郎と綱吉君の間にイスを移動させて堂々と座る。

一瞬、私を見る目が鋭く光ってたようだけど……気のせいとしておこうかな。


「皆さんはぁ〜、あの有名なB.B.Cという会社で働いていると聞きましたぁ〜!」

「うん、元々跡部たちが作ろうって声かけてくれてね。僕たちは少ししか助力できてない状態だけど」


ニコッと笑いながら話しているけど、精市君の額に青筋がうっすらと見え隠れしている。

多分彼女から漂うキツい香水の匂いが癇に障っているのだろう。席が離れている私の方にまで匂いが漂ってきているのだから、傍にいる精市君や永四郎は相当キツいだろうな……


「慣れませんね……この口調にも、匂いにも」

「だね〜」


ボソリという永四郎に、私は同意する。10年前のことがあったとはいえ、流石に慣れる気は起きないな……特にキツい香水の匂いには。口調のほうは……、まあ何とかなるんじゃないのかなって個人的に思う。


「ところでぇ〜、お二人は何処で出逢ったんですかぁ〜?」


いつの間にか、話題が精市君から私と永四郎へと切り替わっていた。

キラキラと輝かせる目の奥にあるどす黒い何かが見えて、私は小さく息を吐く。


「聞きたいんですか?」

「はい! 勿論ですよぅ〜!」

「これを聞いて、後悔しないという自信がありますか?」


「へ?」と呆気にとられる金銅さんに、永四郎はキッと鋭い眼差しを向ける。

私や永四郎たちの出会いは、あまり他人に言えるほど良いものじゃないから……


「そ、それってどういう意味ですかぁ〜?」

「命の保証はしない、と言っているのです。君は、我々の関係に土足で足を踏み入れようとしているのですよ。分かってますか?」

「うッ……」


上手く話をまとめて、残っているパスタに口をつけ始める永四郎。そんな彼の対応に、私は心の中でお礼を言った。

今となっては周りから尊敬の眼差しを受けるようになった私だけど、昔は恐れや貶すような眼差しばかり受けてきたから……

そんな過去……私は話したくないと思っている。他の人にベラベラと話しても良い話じゃないから。永四朗や凛たちは、私が巻き込んだに等しいしね……

特に発展することもなく終わった会話に、金銅さんは小さくワナワナと震えているのが見えた。

こんな調子じゃ、あっという間にこの騒動も解決できそうだ。こんな分かりやすい悪女に、何故ボンゴレは騙されているのかが不思議で仕方がない……

多分、親の権力も関係しているとは思うけどね。これ以上の詮索は、後でマンションに着いてから他の人たちとやることにしようかな。


(後は、星野さんと接触かな……)


カチャ、とナイフやフォークを置きながら顎に手を当てる。


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