01


歩きだすこと数分……私は、裏通りにある小さな公園に辿り着いた。小さな子どもたちがワイワイと騒ぎながら遊んでいる風景は、日本と大して変わらない。

場所は違えど、ここに住んでいる子供たちと日本で暮らす子供たちには大して差はないのだと……この時にふと思った。

丁度視界にベンチが入り込んできたということもあり、私はそのベンチへ腰をおろして辺りを見渡す。滑り台に、ブランコ。砂浜に、近くには自動販売機がある。

ここは、子供達しか知らない小さな隠れ穴場のような場所なのかもね。私のような大人が、人っ子一人見当たらないから。


「隣、宜しいですか?」


聴き覚えのある声が、後ろから聞こえてきた。フッと小さく笑みを浮かべながら、私は振り向いて答える。


「構わないよ、どうぞお隣りへ……六道君」


彼・六道君は、私がそう言ってくるのが分かっていたのか……小さく笑みを浮かべて私の隣へと腰掛けた。




05章:接触U




「ボンゴレ幹部が、こんな場所に居て大丈夫なの?」

「ええ、組織の奴らは……僕の事など気に止めはしないのだから」


哀しい横顔に、私はどう声をかければいいのか少しだけ迷った。哀しい表情を浮かべる六道君に、どう言葉をかけてあげればいいのだろう?

ボンゴレファミリーの一端・霧の守護者である彼にも、なにか事情があるのかもしれない……

先程の会合だって、雲雀君同様に少しだけメンバーから浮いていたのが少し気がかりだったから。


「――ボンゴレ内の苛めについて、君はどう見ている?」

「どう、とは……?」

「星野さんが、愛美って子を苛めているっていう話よ……」


嗚呼、と言いながら彼は顔を下へと向ける。


「僕は、金銅愛美が嘘をついているのを知っている。現場を目撃しているのだから……」

「そう……」


霧という立場上だからかな……霧の守護者は、幻覚や有幻覚を作り出すことのできると聞いている。

六道君は、六道輪廻という特殊な能力の持ち主らしい。その能力を持つが故、苛めの現場を誰よりも早く目撃したのかもしれない。


「貴方は、私達の味方だと思っても構わないってこと?」

「そうなりますね」

「じゃあ、色々情報提供頼んでも良い?」


こうして会話ができたのも何かの縁だ。こちらで情報収集できるのにも限度があるから、内部の細かな情報を入手するにはボンゴレと密接に関係している人物でなくてはならない。


「ええ、構いません。ただ……提供できる情報も限られますが」


そんなことは、最初から分かっている事だ。特に君が気にすることはないのに……


「じゃあさ……明日、仲間と一緒にボンゴレ本部に視察しに向かうから……案内を頼んでも良い?」

「勿論。こんな僕で構わないのなら、ね」


ふと空を見上げると、夕暮れがだんだんと暗くなっていくのが見えた。もう夜になるのか……時間が経つのは本当に早いな……


「ほんじゃ、明日はゆたしく! ボンゴレ本部内で会おうね! 六道君」

「ええ、木手さん」


苗字を呼ばれ、足を止めた。そうだそうだ、これも言っておかないといけない。


「あ、木手さんなんて呼び方しなくていいよ。他人行儀だし、永四朗と被るし」


そう指摘すると、少し困ったように眉をひそめる六道君。普通に名前で呼んでくれればいいのに……難しく考えすぎじゃないかな……


「秋穂で良いから! 私も、骸君って呼ばせてもらうよ」

「え、ええ。そうさせてもらいます……秋穂さん」

「うんうん。じゃ、また明日! 骸君!」


そう言って手を振ってから、私は公園を後にした。

六道骸君……やっぱり、彼は"真実"を見つめることのできる人だ。私の予想が当たって少しだけ嬉しく思う。


「……これで、良かったのですか?」

「ああ。俺の言った通り、彼女に会えただろ?」


物陰から、彼に話しかける人物がいた。周りが暗くなっているせいか、話しかけている人物の顔は確認できない。


「まさか、初対面の君に案内されて……ましてや秋穂さんに仲間として出迎えられるよう誘導されるとは思いませんでした。君は一体……」

「おっと! この先は詮索しないでくれよ。余計は詮索はしないって約束だろ?」

「クフフ、そうでしたね……」

「じゃあな人間! また何かあったら、声をかけてくれ。いつでも力になってやるからなー!」

「ええ、分かりましたよ……今回はありがとうございます。匡さん」


彼が誰かとこうして会話をしている事を……私は知る由もない。



 


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