01


空港から出て、用意してもらった車に乗り込む事数分。黒いベンツは目的地であるボンゴレ本部前へ到着した。


「ここがボンゴレ本部、か」

「わぁ〜、大きいね〜」


跡部君とりっちゃんが交互に言う。

表の世界でも一躍名が広がっているボンゴレだ。こうして本部を前にたっていることが、不思議でならないのだろう。

ましてやここはイタリア。海外には緊急の用がなければ飛ばないから、尚更かもしれない。


「さて、白蘭様のことだ。いつもの会議室を借りて口論しているでしょう……」

「口論がエスカレートしてなければいいけど……」


依頼人の事を気にしながら、桔梗さんに案内されて私達はボンゴレ本部へと足を踏み入れた。


「すみません、白蘭さんと約束をしていた……」

「白蘭だぁ?」


本部の出入り口に立っている部下であろう人達にそう声をかけた途端、何故かいきなり銃を突きつけられた。待て待て待て、ここは市街だぞ!


「上司の命令でね、ミルフィオーレの関係者を入れるなって言われてんだよ」

「すみません、本日はお引き取り下さい」


ニーッコリと笑っているけれど、目は笑っていなかった。全く、こういう人ほど扱いが難しいから困ったもんだよ。


「はいそうですか、で引き返すとでも思ってるのですか?」


一歩前に出たのは桔梗さんだ。彼の言葉に、部下であろう彼らは小さく足を後ろに下げた。


「争いはしません。話をしに来ただけなのですから……現状はコチラが不利なのには変わりませんから、どうか白蘭さんに会わせて下さい。上手く話をまとめて一緒に帰りますから……」


……とまあ、なんだかんだありながら無事に私達はボンゴレ本部へと入る事が出来たんだけど……


「ボンゴレの人達って、初対面の人を睨んだり襲うように教育してるのかな……」

「ハハンッ! どうだろうね……」


私はともかく、跡部君やりっちゃんは一般人だ。非戦闘員であるからこそ、二人に気を配りながら本部の中を歩いた方が良さそう。永四朗は、持ち前の沖縄武術を使って一掃しているからあまり心配はしていない。危なくなったら、手を貸すしね。


「ここですよ」


桔梗さんはそう言い、見えてきた部屋の扉を小さくノックする。何故彼が部屋の場所を知っているのかと言うと、事前に白蘭から聞いたから、らしい。

部屋の中から白蘭の叫びに似た声が聞こえたから、早く入って彼を落ちつかせないといけないな……


「どうぞ」


イライラした男の声が耳に入ってきた。一応了解を得たから、扉を開く事にしよう。

さて、この部屋にいる人物は……何が"真実"で何が"偽り"なのか、分かる人達だろうか……?




03章:誰が敵で誰が味方?




部屋に入って最初に目にしたのは、向かい合うように置かれた二つの机と二人の人物。

その片方に白蘭が立ちあがって手をテーブルに叩きつけていた。


「白蘭、とりあえず落ち着いて話をしてください」

「ッ……秋穂、ちゃん……どうしてここにッ」

「失礼かと思いましたが、彼女たちを連れてきました。お許しください」


桔梗さんが深々と頭を下げて言った。私がここに来る事は、彼自身も知らなかった事だからね。仕方ないか……

とにかく、現状把握をしないと。


「貴方が荒れては話になりませんよ。もう一度、ハッキリとした言葉で訴えるべきだ」


眼鏡を押し上げ、静かに永四朗が言う。冷静な彼の言葉が、とても心強い。


「な、なんなんだよ! テメェらは!!」

「ハッ、ボンゴレの守護者っつーのは礼儀ってもんがなってねぇらしいな?」


跡部君の発言に、煙草を咥えている彼はムッとなりながら口を開こうとするけど……


「静かにしてくれないか、獄寺君」

「十代目ッ……」


唯一椅子に座っている栗毛の彼に咎められ、小さく手を震わせながらも従う。この様子から察するに、彼がボンゴレファミリーのボスみたいだね。


「ちょっと、売り言葉を発してどうするのさ、跡部君」

「ワリィな、ついつい……」

「まったく……」


これがB.B.Cの社長にして跡部財閥の社長って言うんだから目を疑っちゃうよ……横で慌てふためくりっちゃんに、なんとか声をかけて落ちつかせたは良いけれど、向かい側にいるボンゴレのメンバーの目線が痛い。

不審がっているのは目に見えているから、とりあえず自己紹介をしてから本題に入るとしよう。


「いきなりの言動、誠に申し訳ありませんでした。我々は、Bloody Bird Companyの者です」

「Bloody Bird Companyだと!!?」

「ぅお! なんだよ獄寺、知ってるのか?」

「知ってるも何も、超有名じゃねーか!」


さっき、跡部君に怒鳴りつけるように話していた彼……獄寺君は目を見開かせながら隣にいる剣を背負う彼に話をしている。

一応、この場にいるメンバーは……守護者全員だと思って構わないだろう。だけど一人だけ、跡部君や永四朗を見て目をハートにしている人がいた。

多分、彼女が白蘭も問題視している苛めの主犯なのだろう……纏っているオーラが、10年前の金井姉妹と同じだから。


「俺らの仕事は、一般的な事じゃねぇ」

「それじゃあ、一体何を……?」

「苛め……」


ポツリ、とりっちゃんが言葉を発すると彼らは少しだけ目を見開かせた。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -