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*Side 秋穂*

「そう、分かった。資料提供ありがとう、MAKUBEX」

『いえ、それでは……頑張ってくださいね』


ピッと電子音が部屋に響くと、私は視線を天井からパソコンへと動かした。

つい先ほど、日本にいるMAKUBEXから届いた資料には……セイちゃん姉妹と雲雀君・骸君を始めとしたボンゴレメンバーと金銅さんの関係が一覧となっていた。

そこに書かれている事は……今から10年前、苛め舞台となった並盛中学校の現状。金銅さんが転校としてやってきた日を境に、異常現象が起きていたという事。そして、異常を起こしていたのは当時並盛中学に通っていた生徒とその親御さん。

更に詳しく資料を読んで行くと、異常を起こした人達は口々にこう言ったんだとか。


血ィ……をくれぇ……】


――と。


「コレと今回のボンゴレ内での苛めが、どう関連しているかは分からないけど……」


苛めの主犯は予想通り金銅さんだったわけで。彼女の言葉しか気入れられない状態になっているボンゴレ(雲雀さんと骸君を除く)が、影でセイちゃんに手を出していたのは分かった。

だけど、これだけは分からない。この資料に乗っている異常状態を起こした生徒が、今回の騒動に関係しているのかということ。


「まあ、明日になれば分かるかな?」


誰もいない部屋に、ポツリと呟く私の声だけが響いていった……




08章:婚約発表と暴動





*Side 星野*


【ミルフィオーレファミリーのボス・白蘭の婚約者発覚!?】


翌日の朝、誰もがその話題で持ちきりになっていた。ずっと前から結婚はしないと断言していたあの白蘭様が、とうとう妻を決めたのだ。

周りが騒いでいる声を聞いただけだが、とても嬉しい知らせのはずなのに、心がズキッと痛みだす。一体、どうして?


「極限に嬉しい知らせではないか!!」

「そうだね、招待状もわざわざ届けてくれた事だし……」

「まさか、全員を招待しての婚約発表をするだなんて……白蘭の奴、派手っすね」


ここは会議室、皆が集まる広間の一つだ。守護者やボスたちの会話を耳に、私は目線を落とす。

どうせ彼らの事だ、私の事なんて考えていないに決まっている。なのにどうして私をココに呼んだのだろうか?


「ねえ、星野優は連れて行かないのかい?」


ハッキリとした、雲雀さんの声に周りの皆は動かしていた口を止めて彼を見据えて来た。

少しだけ、金銅愛美が目を見開いたように見えたけれど、気にしないでおこう。


「なんでそんな奴の名前が出てくんだよ」

「クフフ、ボンゴレの右腕ともあろう君が……本気でそのようなことを言ってるのですか?」


嫌味のように話す六道さんに、獄寺さんはギリッと奥歯をかみしめて睨みつけている。


「彼女は客人である前に、ミルフィオーレの重要な一員。もし、発表の場に彼女がいないと分かったら……」

「僕らが彼女に何かをしているという事が、バレる……そういうことかい?」

「ええ。分かっているじゃありませんか」


笑みを深める六道さんに、沢田さんは嫌そうに顔をゆがめてから私の方へと目線を動かす。

睨みつけるような、相手を膝まづけるようなその瞳が、私の方へと一直線に降り注いできた。

そして、とんでもない一言を言いのけたのだ。


――じゃあ、発表の場に出られないようにするのはどうだい?

「……え?」


冷めたような声に、私は身動きが取れなくなった。今、彼は何て言った……?


「本気でそう言ってるのかい? 沢田綱吉」


彼の言葉に、雲雀さんも六道さんも、目を見開いて驚きを隠せていないようだった。対する他のメンバーは、特に疑うことなく沢田さんの意見に賛同している。


「僕らは疑われているというのに、本気で言ってるのですか?」

「ああ、そうだよ。クローム辺りに幻術を使ってもらって星野を出していさえすれば、周りは疑わないだろうからね」


おかしい……明らかにおかしい。普段の沢田さんなら、こんな危険なことを犯すはずがない。

本気で私の事を嫌っていても、相手は友好条約を結んでいるミルフィオーレだ。彼らが、幻術を見抜けないわけない。

そう思い、言葉を発しようと口を開いたところで……私は息を呑んだ。


「ッ……」


沢田さんの目が、虚ろになっている……ッ!

他の人達の同じみたいだ。目の焦点が合っていない、まるで抜け殻のような……そんな状態になっていた。


「雲雀さん! 六道さん!!」

「クフフ、分かってますよ」

「いつもの草食動物じゃないね。いや、むしろ……」

フフフ……アッハハハハハハ!!!


部屋の中央で、高らかに笑っている人物なんて一人しかいない。獄寺君の腕に絡み、面白おかしく高笑いをしている人物……金銅愛美……!!


「ようやく上手くいったわねぇ〜」

「ほう? それが君本来の姿、と言ったところですか」

「やっと尻尾を出したようだね」

「ここまでいくのに10年かかったわ〜! 残るは、貴方達だけよ!!」


カッと目を見開いた金銅愛美は、バッと手を前に出して周りにいる沢田さん達に指示を出す。

すると、まるで操り人形のように彼らが私達の前に立ちはだかった。


「クフフ、さて……どう切り抜けましょうか? 雲雀君」

「決まってる……こいつら全員、咬み殺すッ」


雲雀さんはトンファー、六道さんは三叉槍を手にとって戦闘態勢に入った。


「星野さんは下がっていた方が良い、君は非戦闘員ですからね」

「僕の後ろから、絶対離れたら駄目だよ」

「はい……ッ」


闘えない自分が歯がゆく思う。雲雀さんに守られる中、沢田さん達は地面を蹴って襲いかかってきた……


 


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