04
「は、は……ごめんな、愛美ちゃん……」
この場にいた誰もが、目を見開いて固まった。多分、監視カメラ越しで見ているであろう白蘭たちも、同じように思っているに違いない。だって……
「なゼ、私ノ支配下に在っタ筈……」
驚愕の声色を出しながら、目だけを動かす彼女。
「ははっ、実はな……俺は君に操られてはいなかったんだよ」
そう優しく声をかけながら、自身の武器である刀に力を込めて彼女の胸を深く突き刺す。
気絶しているとばかり思っていた、あの雨の守護者・山本武君が苦しそうな笑みを向けながら彼女に話しているのだ。
「ツナたちに反対すれば、絶対何かされるって……分かってた。10年前だって、裏で燐ちゃんを助けてばかりいたけど……それも限界が来ているのは重々承知の上だった……それでも、燐ちゃんは俺の事を許してくれたんだ。『もう大丈夫、気に止めないでいいんだよ』って言ってくれた……その言葉で俺は、救われたとばかり思っていた。だけど、ツナたちは君に操られていて全然周りに見向きも起きなかった。それは、この建物にいた人間にも言える事だ……そんな変に交差された組織を作っちゃいけない、皆の目を覚まして一番最初から作り上げないといけない……でも、解決策が見つからない……そう俺が困っている時に現れたのが、B.B.Cのメンバーだった。救世主が来たかと思ったんだ……あの白蘭でさえ、何度訴えに来ても追いだすばかりだったツナが、しぶしぶだけど承諾したから……だから、俺も頑張って、動こうと……」
「山本、君……」
もしかしたら、彼はとても辛い立場にいたのかも。
最初は一番卑怯と言われってる傍観者にいたかもしれない。それでも、なんとか元の皆に戻ってほしくて……アクションを起こしても見向きもしてくれない。その時に感じた絶望は、私には分からない。山本君にしか、感じ得ないモノだと思う。
「俺、愛美ちゃんの事……大好きだったぜ。元気で、皆に笑顔を振りまいて、まるで太陽みたいな……そんな優しい愛美ちゃんが、大好きだった……ぜ」
辛そうに涙を流し、更に奥へと刃を押しこんで彼女の息の根を止めていく……
「人間、風情……が――」
とても辛い光景だった。口から大量の血を吐いて、山本君に体重を預けるように絶命していく愛美さん。
その時に見た彼女の顔は、とても倖せそうに……小さく笑みを浮かべていた……
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