03
「西洋の鬼っつっても、どうせあん時の奴らと同じじゃねーか」
「ですが、相当改良されています。流石時代の流れと言いますか……最後の大占めですので、手を抜かないように……」
「援護は任せてください!」
横に立っている四人の顔を見て私は言葉を失った。色とりどりだった彼らの髪と目が、白髪金眼へと色を変えていたからだ。
そして、彼らの額に生えているのは……人間は到底持ち得ないモノ……
「つ、の……」
「秋穂……これで最後にしますよ」
私の呟きを遮るように永四朗が話す。その言葉に勇気を貰ってか、私は重たい身体を持ち上げる。
「うん、分かってる……最後の最後まで、諦めない……!」
「ハッ! 何度立ち向かおうが、我が兵を前に何処まで言えるかな?」
「その兵隊、もうここには来ないよ」
勝利を確信した金銅さんの声にこたえるように聞こえた声……彼は――
「か、鏡、さん……」
「やあ、秋穂。相当な深手を負ってるじゃないか……無理のしすぎだよ」
「やれやれ、流石従兄……と思えてしまう私は少々悲しいですね」
「蔵人さんまで……」
そう、広間の出入り口には白と黒の対象的な服を着ている二人の男……鏡さんと蔵人兄さんが対になるように立っていた。
「ボンゴレのセキュリティも、大したことないわね〜」
ハロ〜! と言って手を振るマリーアさんまでも、この本部へ来てくれていた事には驚いた。
手元がキラキラと輝いて見えるのは、多分法術を使ったからだと思われる。
「マリーアさんのおかげで、彼女の言動も、目的も……全て監視カメラから見ていました。映像がミルフィオーレへと流れていくようにプログラムを組んだウイルスを忍ばせておいたのが幸いでした。これ以上、ボンゴレに仇を成すような事があれば……ミルフィオーレやヴァリアーが加戦してくる事でしょう」
「!? くっ……」
兵が来ない事に異変を感じた彼女は、ギリッと奥歯をかみしめて再度小刀を握りしめた。
「鬼って言っても、僕の"ダイヤモンド・ダスト"の前では人間と全く同じだったよ。いや、むしろ人間より脆かったかな」
「呆気にとられるくらい弱かったのは事実でしょう……心臓さえ押さえれば、立ちあがる事がなかったのですから」
「弱い弱い! 正統な魔女相手に束でかかってくるなんて、まだ人間の方が利口よ!」
「おの、れ……」
ワナワナと震えながら、まるで狂ったかのように声を上げて飛び上がってきた。先程までの茶髪藍色の瞳が、今は白髪赤眼へと色を変えていた。
「おのれオノレおのれオノレおのれオノレェェェェェ!!! 人間の分際で、ヨくも同胞ヲ……!」
「手は抜かん。本気で来るが良いッ!!」
千景さんの叫び声と共に、彼の刃が金銅さんの腹部をかする。
血は流れるけれど、その傷はあっという間にふさがってしまった。鬼は治癒能力が人間と比べて早いみたいだ。
「うわああアああアああアああ!!!」
「くっ……速いッ」
「おいおい大将さんよぉ、こっちも忘れてもらっちゃ困るぜッ!!」
ダァンッ! と、匡さんの放つ銃弾の音が部屋の中に何度も木霊する。だが、その銃弾を彼女は全て避けている……瞬発性も長けているみたい……
「お、追いつかない……!」
「お前カら先ニ、死ねェェぇェェぇ!!」
狂ったような声を上げ、金銅さんは刃を灯さんへと向けて走り出す。
誰もが予測していなかったのか、彼女の行動に瞬時に察知した千景さんだけど灯さんの元まではどんなに早く走ったところで追いつかない。
絶体絶命――誰もがそう思ったに違いない。私や永四朗、蔵人兄さんも鏡さんも同じように思っただろう。
だけど、次の瞬間……
―ザシュッ……
「な、ニ……」
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