02


「東西南北に領地を分け、西は風間・東は雪村・北は桜花・南は赤屍が牛耳っていたと聞くが……今となっては伝説。存在すらしていないはずだったが……まさか、あやつが西の統領とはな」


今、金銅さんの言葉に私は耳を疑った。南を赤屍が牛耳っていた……? と、いうことは……私や蔵人兄さんのご先祖様!?

いやいやいや、今から何年前の話をしているんだこの人……!!


「へっ、俺ら鬼の一族はある事件をきっかけに隠れて暮らす事にしたんだよッ! 幸い、北の統領は滅ばずに現存してたから種族存続はなんとかなってるがな!」

「匡、あまりお喋りするのは感心しません。秋穂さんが驚かれるでしょう」

「あ、そう言えばそうだな」


う〜〜ん、この二人の会話も意味がさっぱり分からない。鬼の一族ってヤツと私に一体どんな関係があるんだ……!?

謎が謎を呼ぶ、というのはまさしく今の現状の事を言っているんだろうな……


「もう! 難しい話は嫌いだぁぁぁぁ〜〜!!」

「ぅおっ!」

「やはり……秋穂さんらしいですね」


私の叫び声に隠れるように、二人が小さく何かを言ったようだけど……気にしない!


「そもそも、ボンゴレに取り入ってセイちゃんを嵌めて……帝国を作るのと何の関係が……!?」

「帝国を築き上げる為には格段に勢力を上げている組織に取入る必要があった。今から10年前、ボンゴレと名乗るマフィアが一番の力を持っていたのを知った私は、時期ボスと言われている沢田綱吉に接触する事にした。だが、取り入れようにも中々上手くいかなかったのだ。星野燐が邪魔だったのだよ……!」


醜い顔を更に歪ませて、懐にあったであろう短剣を手にとって刃をセイちゃんに向ける。


「媚を売り、我が術中に陥れるのには相当時間がかかった。軽い暗示をかけさえすれば、あやつら簡単に彼女を自殺まで追い込んでくれたぞ。まあ、雲雀恭弥と六道骸率いる黒曜中に通っていた奴らには我が暗示は効かなかったようだがな」

「完全な術中へ陥れるのに、10年もの歳月がかかった……と?」

「まあ、簡単に言えばそうだな。この私が崩落しない限り、奴らは操り人形のままさ!!」


マズイ……激戦を繰り返しているせいか、身体が思うように動かなくなってきた……

血も流しすぎたし、頭まで血が巡りきれていない感じだ……このまま、倒れてしまいそうだ……

初めて感じる強大な『闇』を前に、成す術がなく立ちつくしそうになった時だ。



「この場で倒れては困るぞ。威勢が足りないようだな? 秋穂」



嗚呼、この我が物顔が浮かんできそうな声には聴き覚えがある。ここに来る前、助けてくれた人物の声だ。


「大きな、お世話です。ホンット、偉そうですよね……」

「フン、今に始まった事ではない」

「なんだろう……すっごく納得してしまう」


ぐったりとしながら顔を隠していると、ゴツッと痛い音と共に頭の頂点に痛みが走る。


「い゙ッ……」

「このくらいで音(ね)を上げているようでは先が思いやられるぞ」

「うっさい……」


この人、思い切り殴っただろ……! すっごい痛いんだけど……ッ!!


「秋穂……そろそろトドメを刺さなければいけませんよ」


すぐ後ろから聞こえる声に、私は小さく笑みを浮かべた。


「そうだね、永四朗……行くよッ!」

「ええ」


ゆっくりと、夫の手を借りながら立ちあがる私は真っ直ぐ彼女を見つめた。

そして、出来る限りの力を使って手に剣を構える。


「喜べ、西洋の鬼よ。西の国の統領直々に貴様を葬ってやるのだからな……!!」


一瞬……この場の空気が変わったのを肌で感じる事が出来た。

何が変わったかまでは分からないけれど、確かに変わった気配がする。恐る恐る顔を上げると……


×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -