03
*Side 秋穂*
ボンゴレ本部の前に着て、私は自分の目を疑った。
「どうして、こうなるのよ……」
本部はほぼ壊滅状態……建物のいたる所から煙が上がっている。このビル周辺に住む住人は、危険を察知したのかバタバタと家から離れていく人の波で溢れ返っていた。
「昨日までが嘘のようですね」
「う、ん……はやく中に入らないと……」
永四朗の頷きを見てから、私も答えるように頷いた。そして、煙が立ち込める建物の中へと入って行く……
中はと言うと、とても言葉では言い表せないくらい……悲惨な状態になっていた。
「守護者の皆は何処に……」
「建物の状態が不安定です……早く見つけなければッ」
「うん」
今もなお崩れてくる天井を気にしながら、かろうじて登れる階段を見つけて上へと向かう。
目的地はただ一つ……ボンゴレがよく使っていると聞いている大会議室だ。
「ッ! 秋穂!!」
永四朗の言葉と同時に、私の背後に突如現れた人の気配。
私は持ち前の武器を手に取り、相手を切りつける。普段なら深手を負った相手は起き上がることはない。だけど……
「ひひひ、ひゃはははははは!! 血ィ、血だぁ……!」
「んなッ」
傷はみるみるうちに塞がっていき、相手は自身の血を見ては狂気に似た叫び声を上げた。
なんなんだ、この敵は……不死身なの……!? 昨日MAKUBEX君から貰った資料に書かれていた状況と全く同じだし、これは一体……?
相手がもう一度武器を手にして武器を振りかぶろうとした時だった――
―ザシュッ……
敵の胸に、刀が貫いた。相手はそのまま声を発する事なくこの場に崩れ落ちる。
「フン、下種が……」
「あ、貴方は……」
そして私は、この場に現れた人物を見て目を疑ったんだ。
何故なら、数日前にあの店で見かけて声をかけた相手だったから……
金髪赤眼の……確か、千景さんって呼ばれていた人。
「危なかったな、危うく殺されそうになってたではないか」
「ちょッ」
ハッと小馬鹿にするような表情を浮かべる彼に、どう反論しようか口を開くのは良いが……言葉が出てこなかった。
何故なら、彼の言っていることは事実だったから……
「この人、普通の人間じゃ……ない?」
「ああ、まがい者だ」
嫌そうにそう話すと、彼は羽織っている黒い衣をなびかせて別の廊下へと足を運ばせた。
今見ると、彼が来ている服……和服じゃない? 白い着物に草履を履いていたし……
うん、少し違和感を感じるけど……あまり気にしない方が良いかもしれない。
「秋穂、一つだけ助言してやる。在り難く思うが良い」
「まったく、何さ」
上から目線での物言いは彼のデフォらしく、私は特に気にすることなく返事を返した。
「こいつらは普通の人間ではない」
「それはさっき話してくれたじゃない」
「心の臓を貫かない限り、奴らは何度も立ちあがって襲ってくる。気を付ける事だな」
彼なりの優しさ、なのかな……?
「にふぇーでーびる」
「? 早く先へと行くんだな」
流石の彼も、うちなーぐちは分からなかったか。
重要な情報を提供してくれた事に感謝しながら、私達は先へと進んだ。
……と、いうか。
「あの人、なんで敵を"まがい者"って言ったんだろう……」
「考えるのは後にしましょう。とにかく、早くボンゴレ守護者と合流しなければ……!」
「あ、うん!」
疑問を持つより、目の前の現状を何とかしないといけない。それは私が一番良く分かっている事だ。
階段も壁も崩落状態な建物だけど、なんとか生きている通路を見つけては上へ上へと登って行く。
―ダァァン! ダァァン!!
そう遠くない場所から銃声が聞こえてくる。しかも聞こえてきた方角が、目的地である広間だから尚更驚いた。
―バタァァン!
「皆さん! 無事ですか!?」
扉を開いてそう大声を出したけど、私は目の前の光景に目を見開いた。
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