04


「そして月日は流れ、私は努力の末ミルフィオーレに入る事が出来ました」


私がミルフィオーレに所属した理由は、姉繋がりで無理やりボンゴレの仲間に入らないか、と何かと誘ってくるツナ先輩たちの手から逃れる為。

あの時の彼らは、尋常じゃなかった事を覚えている。だから、逃げたんだ。日本を飛び出して、海外で勢力を上げているミルフィオーレという組織に在籍している入江さんと知り合って、組織の仲間として迎え入れてもらって今に至る。


「組織内で雑用を主にこなしているところに、白蘭様に声を掛けてもらい……秘書という役職とこれを受け取ったのです」


そう言いながらテーブルに置いたのは、私が持つ地のマーレリング。三大勢力にはなくてはならない代物だ。この事実に、この部屋にいた人達は驚きの声を漏らしていた。


「これがマーレリングかいな……」

「初めて見るC〜」


目を輝かせているのは、忍足さんと芥川さんだ。


「貴方がマーレリング所持者だと知っているのは……?」

「雲雀さんと六道さん、クロームさんに犬さんに千種さんだけです。他の人達は、私に見向きもしませんから」


鈴さんの言葉に、小さく目を伏せて話すと彼女は少し辛そうに顔をゆがめた。


「そっか……長年の苛め騒動ってことだね。私達が請け負った中で、とても大がかりな依頼だ」

「それを知って、あえて白蘭は秋穂に依頼したんだろ?」


赤髪の……岳人さんの言葉に、木手さんはぐったりとしながら顔をテーブルに突っ伏す。想像以上の出来事に、頭を抱えてしまっているみたい……


「ま、お得意さんだから大目に見た結果がこれだもんね。最後まで導いてあげようじゃない、"真実"にさ」

「気合入るにゃ〜!」

「早いとこ解決してやりましょう」


フシュー、と最後に付け足すように言葉を発している海堂さんに、グッと拳を作って話をしてくれる菊丸さん。

皆、最後まで私の話を聞いてくれて……手を貸してくれると言ってくれた。白蘭様、とても素敵な方々を私の元へ送ってくださってありがとうございます。後でお礼を言わなければいけません。


「ところでさー、セイちゃんは白蘭のことどう思ってんの?」

「…………え? セイちゃ……え?」

「星野さんだから、セイちゃんばーよ」


聞き慣れない言葉に、私は目を丸くさせる。"セイちゃん"という名前は、どうやら私の事を指している見たいだ。

変わったあだ名だなって思った。でも、愛称として呼んでくれているのが少しだけ嬉しい。


「どう、と言われましても……」

「あれさ、どう見ても白蘭はセイちゃんにゾッコンだと思う人挙手ッ!!」

「はいはーい!」

「自分もそう思うわ」


ノリノリに話す木手さんの言葉に、元気良く手を上げたのは向日さん。それに続くように手を上げたのは忍足さんだ。


「あれはどう見たってそうだろうが」

「分かりやすい愛情表現だよね」

「星野が気付いていない確率、89%と言ったところか」


跡部さんに、奥さんの鈴さんまで……なんか、言われ放題な状態になってきたんだけど……

誰が、誰に、ゾッコンだっていうの……!?

わ、私と白蘭様は上司と部下の関係。それ以外の何物でもないというのに……


「さて、当の本人はどう思ってるわけ?」

「ぅえ!? わ、私は……その……」

「あらら、うろたえちゃって……可愛いなぁ〜! もう!」


ううう、言葉を振られても困るよ。私と白蘭様は上司と部下……そう思っているのに……心の何処かにいるもう一人の私は否定の声を上げているんだ。一緒にいたいという気持ちはある。

でも、相手は上司で、ミルフィオーレのボスなんだよ? そんな人が、私の事を女性として見てるわけがない……もしそうだとしても、信じられないよ。


「ま、明日は重大発表があるらしいしね。お楽しみとして、後で取っておこうか!」

「じゅ、重大発表……ですか」

「うん。もうじきボンゴレにも知らせとして届くはずだから、楽しみにしてなよ」


明日、全てを終わらせるから。MAKUBEX君から資料も貰ったし、全て揃いつつあるしね。

そう言い残して、木手さんたち一行はボンゴレ本部を後にした。

残された私はと言うと、あの人達が話していた意味深な言葉に頭を悩ませることしかできないでいる。

一体、明日は何が起こるというのだろう? もし、木手さんが言う言葉が本当なら……私はこの地獄のような日々から脱出できるのかな?

期待と不安が交差する中、私は翌日を迎える事になった。

 


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