02

 
今日もボンゴレ内を永四郎と歩いたけれど、目的の星野さんと出会うことができなかったのだ。

私たちの本当の目的は、彼女と接触して話をして真実へと導く手助けをすることだというのに……調査を始めて二週間、全く会わないのも不思議な話だ。

誰も行かないような、裏道や物陰へも足を運んだけれど……彼女らしき人影を見つけることはできなかったのもおかしい。

後で白蘭に話をしてみないとな、と思っている時――


「いったぁ〜い!」


大人げない声が、私の耳に入ってきた。声がしたほうへと顔を動かすと、盛大に転んでいる金銅さんと彼女を見下すように見つめている一人の男がいた。

金髪赤目で、ショートヘアーの男だ。


「フン、わざとぶつかっておきながら大きな声を出すな」

「な、なによぅ〜!」


上目使いで話をする金銅さんに、彼は微動だにもせずに鼻で笑っている。

わぁ、跡部君以上の俺様オーラを発しているように見えるのは私の気のせいじゃないはずだ。


「千景、向こうで二人が待ってるけど……どうしたの?」


そんな彼らのもとへ、一人の女性が駆け寄ってきた。黒髪藍色の瞳にロングヘアーの女性だ。そしてとても綺麗な人だ……!


「この女がいきなりぶつかってきたのだ」

「わ、私のせいじゃないですってばぁ〜!」

「もう……詳しい状況説明してよ、結論だけ言われても分からないってば」


掌を額に当てて話す彼女は、千景と呼ばれた彼の話を聞きながら頷いていた。

それを横で聞いていた綱吉君が立ち上がり、金銅さんの元へと近づいていく。それは、他の席に座っていた守護者たちも同じで、ワラワラと彼女の周りを囲うように立ちはだかる。あ、骸君やクロームちゃんに雲雀さんは特に気に止めることなくパクパクとご飯食べてるし……


「おい! ぶつかっておきながら謝りもしねーのかよ!!」

「貴様の目は節穴か? 俺は普通にここを歩いていただけだ。この女が勝手にわざとぶつかってきただけだぞ」


わざと、という言葉を強調させて話す彼に対して……


「じゃあなんで愛美は泣いてんだよ!」


山本君や獄寺君がそう叫ぶ。その言葉に、彼はピクリと眉を動かした。


「ほう? 貴様らはそこの女の味方をするのか? 現場を見ていないというのに、ただ"泣いている"というだけで」

「愛美が泣いてんだ! それだけで十分だ!」


嗚呼、なんかデジャヴを感じた……苛めの典型的な現象に、赤也君や精市君も眉間にしわを寄せている。


「どうしますか?」

「少しだけ様子を見よう……暴力沙汰が起きたら、僕らが止めればいいんだから」


そう精市君は話、少し離れた場所に座る源一郎さんたちにアイコンタクトを送る。

私も凛や裕次郎たちにアイコンタクトを送る。彼らは沖縄武術を体得しているから、暴力沙汰を止めるにはとても頼りになる。


「おいおい、お二人さん。どうかしたか〜?」


そこへ、また別の場所から人がやってきた。長い髪を頭の上へと結んでいる男……彼は、金髪赤目の彼と知り合いのようだ。


「なんかね、彼女がわざと千景にぶつかってきて泣きつかれたんだって」

「ハァ? 千景に泣きつくとか、とんだ怖いもの知らずだな!!」

「もう、匡……笑いすぎだから」


駆け寄ってきた女性の話を聞いて、彼はハハハ! とお腹を押さえながら笑い出してしまった。流石の私も、この現場に目を点にしてしまった。幸い、この店には私たちや彼ら以外誰も人はいないから良かったと思う。

少しだけ、骸君が驚きながら彼らを見ているようだけど……


「おい、さっさと食事を済ませてここを出るぞ。とんだ時間を無駄にしてしまった」

「待てよテメェ!!」

「すみません! 彼も悪気があるわけじゃないんです! 本当にぶつかってしまったようならば謝りますから……その……」


どう言葉をかければいいのか迷っているようだ。慌てふためく彼女に、少し離れた席に食事を置いた彼が声をかけた。


「灯、そんな下等な奴らを相手にするな。早く来い」

「もう! そこまで言わなくてもいいじゃない!!」

「奴らは"結果"しか見ていない馬鹿な人間共だ。"過程"を何故見ようとしないのだ?」

「それを私に言われても困るんだけど……」


そんな会話をした後にペコペコと頭を下げた彼女は、慌てながら少し離れた席へと座った。


「あ、幸村部長! 俺が話してたのは、あの人ッスよ!」

「それはホントかい? 赤也」

「はい!」


今思い出したかのように話す赤也君の指差す先には、彼らと共に食事をとる赤髪の男がいた。

成程。赤也君の話が本当なら、彼に少しだけ話をしておく必要があるかもしれない。


「少しだけ席を外すけど、平気?」

「大丈夫ッス!」

「いってらっしゃい」

「早く戻ってきなさいよ」


赤也君・精市君・永四郎の順で言葉を貰い、テーブルの中央に置かれているワインと私が使っているグラスを持って歩き出す。


「なんで……なんで思い通りにいかないのよ……!」


すれ違い様に小さく聞こえた声に、私は小さくフッと笑う。

この声は金銅さんのものだ。小さすぎて、周りで騒いでいるボンゴレメンバーには聞こえていないみたい。おそらく、これが金銅さんの本性の一部なのだろう。


(早く、気付ければいいのに……)


そう思いながら歩き、パクパクとパスタに口をつけて感激している彼女の横へと立った。


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