02
そして翌日。
永四朗・凛・裕次郎・慧君・寛君の比嘉メンバー。そして精市君・源一郎さん・赤也君・雅治君・柳さん・柳生さん・丸井君・ジャッカル君の立海メンバー。
最後に私とうおちゃん……というなんとも豪華なメンバーが、ボンゴレ本部の前に立っている。
「とうとうやってきたって感じだね」
「出迎えて、くれるのでしょうか……?」
「一応、僕たちは視察と言う名の苛め解決でやってきているんだ。出迎えてくれなきゃ、解決しようがないじゃない?」
精市君の言葉にも一理ある。私達は、ボンゴレとミルフィオーレの抱えている問題を解決する為にやってきたのだ。
そのことは、ボスである沢田綱吉君にも行き届いているはずだけど……
そう思いながら顎に手を添えていると、正面玄関が開いて一人の男が歩み寄ってきた。
「クフフ、ようこそボンゴレ本部へ」
「どうも〜、案内ゆたしくね! 骸君」
「ええ」
私がそう彼に声をかけると、永四朗や精市君は少しだけ目を見開かせていた。
だけど、少し間を開けて何かを理解したように頷いてくれる。私が、会って間もない人の事を名前で呼んでいるのだ。
私が名前を呼ぶということは、仲間として認識しているという暗黙の了解。そのことを、私の一番近くで見てくれている永四朗と私の動向を瞬時に察知している精市君は理解してくれたみたい。
「まず最初に、ボスに会いに行かない事には始まりませんから……」
「そうだね。ほんじゃ、頼んだ!」
「クフフ……」
小さく笑みを浮かべる彼を追うように、私を筆頭として永四朗たちはボンゴレ本部へと足を踏み入れたのだった……
***
*Side 雲雀*
一体、何が起きているのか……今の僕には理解できなかった。
「やめてください。私には君と闘う理由がない」
そう言いながら手を前に出している人物は、突然僕の部屋に現れた男だ。
白い蛇の模様が書かれた黒い服に、赤髪の男……歳は僕よりいくつか上のように見て取れる。
「じゃあ、なんで僕の部屋に踏み入れているの? 場合によっては、噛み殺すけど」
愛用の武器を手にして構えると、目の前の男は少しだけ溜め息をついた。
「私は、君を秋穂さんたちの元へと誘導するように言われているだけです」
「へえ? 一体誰にだい?」
「それは言えません。ただ、君にとっても悪い話ではないはず……」
確かに……木手秋穂と言えば、昨日ミルフィオーレの白蘭って奴の依頼としてやってきた日本で有名な会社の支店を任されている人物。
そして、沖縄の秩序を守っていると聞いた。同じように並盛の秩序を守っている身として、彼女ほど闘ってみたいという感情を抱いたのも久しぶりだ。
それほど、彼女の戦闘能力が気になっているんだ。そして、人間性としても……何故か惹かれる何かがある。そう思っている……
「誰かの言いなりになるのは不本意だけど、僕にとって良い方向に転がるのなら……君の話を聞いてあげても良いよ」
「ありがとうございます」
無表情に、礼を言いながら頭を下げるこの男……秋穂という人物となにか関わりがあるのだろうか……?
「ところでさ、君って何者?」
「詳しいことは言えませんが……私の事は、九寿と呼んでくださって構いません」
ふーん、変わった名前だね……
「もう一つ確認だけど……」
「何でしょうか?」
「君ってさ、敵? それとも、味方?」
ここまで良い方へと導いてくれる存在だからこそ聞きたかった。僕は彼のような知り合いはいないし、関わった事がないからね。
「――味方ですよ。私には、"借り"がありますからね」
「そう……」
その一言だけ聞ければ満足だ。"借り"という言葉が気がかりだけど、問い詰めたところで何も話をしてくれないだろうから。
「今から数分後、六道骸という男に案内されている秋穂さんが他の人達に『自由に行動しろ』という命を下します。その時、この部屋の近くを切原赤也が通ります。まずは、彼と接触をしてください」
「へぇ、そんなことまで分かるんだ。君の意見に従ってみようかな」
そう話すと、九寿という男はお礼を述べてからスゥッとこの場から姿を消した。彼には、霧特有の能力でもあるのだろうか?
この場にいきなり現れ、消えるなんて芸当……あの南国果実頭の奴しかできないと思っていたんだけど……
「まあ、しばらく待ってみるとするか」
愛用の武器を匣の中に閉まって、窓の外を見つめる。青い空には、いくつか白い小さな雲が浮かんでいるのが見えた……
「秋穂さんと早く接触してください……そこまで導くのが、私の務めでもあり、私なりの君への"お礼"なのですから……」
僕のいる部屋にある窓の近くで、先程の九寿という奴が呟くけれど……その事を知る者は誰もいない……
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