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「そうだ、俺様達の仕事は"苛め解決"が主だ。功績が認められ、今では日本全土に支社をおけるようにまで拡大した」

「そして彼は跡部財閥の社長、世界にも目を向けて事業拡大を考えて……ここに来ました」


云わば私達は"苛め解決"のスペシャリスト、とまで言われているくらいだ。

典型的なモノから特殊なものまで、会社を設立してから今年で四年……急成長を遂げて世間から高く評価されている。

そんな私達が、わざわざ海外へやって来た理由……それは流石のボンゴレも分かっているはず。


「まあ、これは表向きですが……本来の目的はボンゴレとミルフィオーレの問題を解決に来ただけです」

「解決?」

「白蘭は私の依頼人だ。証拠も揃え、とある人物を返してほしいと交渉しているようだけど……一応聞きましょう、返さない理由を」


数歩前に出てそうボンゴレボスに問うた。会社の事業目的である苛め問題は、主に私が担当している。

10年前の出来事を悔やみ、あの時解決させた私が一番の適任だと跡部君が判断したのだ。ただ単に沖縄支店の支店長を任せるだけだとは思っていなかったけど、こんな大役聞いてなかったし……

別に私も断る理由はないから、彼の申し出を快く引き受けたのが四年前。今となっては、沖縄の秩序を守りながら本土へと足を運ぶようになったと思う。


「一応、ボンゴレ内での星野さんの活動は俺たちの動力部分になっている。そう簡単に返すようなことはできないし、ましてや愛美を苛めているときた。きっちりと、制裁を下す判断は間違っていないと思うけど……」

「だけど! これだけ証拠が揃っているんだ、彼女は無実な筈だろう!」


ダンッと机を叩く白蘭を落ち着かせるように、私は彼の肩に手を置いた。

頭に血が上りすぎている……これ以上話しては、向こうの良い方へと話を持って行かれかねない。


「一応これだけは聞きます。この騒動のきっかけはなんですか? 依頼人の話を聞く限り、星野さんという方は意味もなく行動を起こすような人ではないはず」

「ああ、最初は俺達もそう思っていた。だがな、彼女が来てから数ヶ月後……」

「アイツ、いきなり愛美に怪我を追わせたんだ。一度だけじゃなく、何度も!!」

「へぇ?」


私は彼らの話を聞きながら、愛美さんであろう彼女の腕を見つめる。包帯が巻かれているのは、左手首みたい。

彼女の利き腕が右ならば、この怪我を偽造するのも容易い。


「後を追うように、暴力も何度やったか分からねぇ……もう我慢できねぇんだよ!!」

「ちなみに、その現場を見た人は? もしや、いないのではないですか?」


返答を待たずにそう話すと、ボンゴレメンバーはキュッと口を閉ざした。私の言ったことは間違いじゃない。この様子だと、皆は現場を目撃していないみたいだ。

これでハッキリしたのは、10年前の私達のような状況になりかけているということ。否、もう既になっているのかもしれない。


「――分かりました。明日から調査をしようと思います、なので翌日は私や他のメンバーが向かうと思いますんで、宜しくお願いします」

「あ、ああ」

「受け入れて下さりありがとうございます。私達からのお話はこれにて……。では、最後に自己紹介でも……」


深々と礼をしてから、私は跡部君へと目線を動かした。それに気付いた彼は、数歩前に出て口を開く。


「俺様の名は跡部景吾。Bloody Bird Companyの社長でもあり、跡部財閥の社長も担っている。そして彼女は……」

「初めまして、跡部鈴と申します。彼の妻でもあり、会社の秘書をしています」


一礼するりっちゃんを見てから、今度は永四朗が私の横に並ぶ。


「木手永四朗と言います。テニス界では一応名が知れ渡っていると思いますので、詳しい事は調べてもらう事にして……微力ながら跡部君に力を貸すべく来ました」

「そして最後になりましたが、私は木手秋穂。Bloody Bird Company沖縄支店の店長を担ってます。"沖縄の秩序"とも呼ばれてますが、あまり気にしないでください。周りがそう呼びたいから呼ばせているだけなので……」


ニコッと微笑みながら話をすると、ボンゴレの一人がピクリと反応して私を見つめていた。


「木手、ということはお二人はご結婚されているという事ですね?」


独特の髪形をしているオッドアイの男が、ゆっくりと私達を見つめて話をする。


「ええ、あまり公表しないでくださいね。彼女の仕事に支障が出るので、俺もテレビの取材で名前を上げていないだけです……」

「クフフ、成程……」


彼の言っていることは間違ってない。仕事の支障を出さないようにする為、言っていないだけなのだ。

私の場合は、周りが公認しているから言う以前の問題だけど……それに、永四朗は超がつくほど私に甘い。

凛とうおちゃんの仲以上に、私達はお互いを束縛していると思っている。この人さえいれば、他に何もいらない……そう思っていても過言ではないから。


「では、明日お会いしましょう。依頼人、行きましょうか」

「そう、だね」


結局、良い成果は出せなかったんだろう。少し落ち込み気味の白蘭を気にしながら、私達は部屋を後にする。彼が用意した書類をまとめ、私達は部屋を後にした。

彼を桔梗さんに任せて、私達は少しゆっくりと歩きながら出口へと行く。


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