最終章
「やっぱさ、二人揃って何か企んでるでしょ」
「ん? 何のことや?」
んで、観覧車に乗った私たち。
向き合うように座る私と姫条君に、一つ隣のゴンドラにはタマちゃんと鈴鹿君の姿が見えた。
私とタマちゃんが話している横で、強引に話を進める鈴鹿君と姫条君。
やっぱり、男子二人も何か企んで動いているようにしか目に映らない。
でも……嬉しいから別にいいんだけどね。
「あ、夕日だ……」
「おッ! 絶景やないか!」
二人揃ってゴンドラの外を見つめる。今まで見た事のない、綺麗な夕日が目に飛び込んできた。
本当に、綺麗……
「秋奈ちゃん……」
「? 何?」
問いかけながら顔を前へと動かす。
真剣な眼差しで私を見つめる姫条君に、思わずドキリと鼓動を打つ。
「俺……軽いノリで秋奈ちゃんに話しかけたんや。いつも見かける女の子で、それだけやって思ってたんや。それなのに……」
苦そうに、口を閉ざしながら姫条君は何かを私に伝えようとしている。
それだけは分った。だって、私も同じだから……
「私たちって、似た者同士かもね」
「? 何やいきなり……」
「だって、私だって同じだから……」
そう、同じなんだ。
「私ね、姫条君のことが―――」
勇気を持って、そう告げようとしたら……
「ッ!」
腕を引っ張られ、倒れるかと思ったら姫条君の腕の中に捕まって……顔をあげたら――
キス、されてた。
「アカンやろ? 先に俺の言葉持っていったら〜」
照れくさいのか、頬を赤くしながらそう言う。
「だ、だったら! 言えばいいじゃない!!」
「アホ! 世の中には口に出して言いたくても言えんことがあるんや!」
そんな、顔を真っ赤にして言われても……全然説得力がない。
「好きや、俺と付き合うてくれ」
「はい! 宜しくお願いします」
その会話が終わると同時に、ゴンドラの扉が開かれた。
「お疲れ様です!」
「お、もう地上か。はよ降りよか」
「そうだね」
自然と差し出された手を握り、私たちは鈴鹿君達を待った。
「よー、どうだったんだよ」
「バッチリや」
グッと親指を立てる姫条君に、私とタマちゃんはお互いに顔を合わせた。
「もしかして……」
「バッ、違うからな!!」
タマちゃんの言葉をさえぎる鈴鹿君。なんか、変なの……
「ほな、俺らはこの辺で……」
「えッ」
「おーおー、さっさと行けよ」
シッシと追い払うように言葉を吐き捨てる鈴鹿君に見送られ、私たちは先に遊園地を出た。
「まずは、お兄さんに報告な? あと、ウニ頭蛮さんに自慢しに行くやろ? それから……」
「え、あの……話についていけないんだけど……」
「大丈夫やって! 秋奈ちゃんは、俺と一緒におればエエんや。な?」
彼の言葉に、私はクスッと笑って「そうだね」と返事を返す。
そう、彼なら信じることができる。唯一心を開いた、大切な存在だから……
***
*姫条Side*
そして次の日。
「ほう? それは何よりです。私も安心しました」
お兄さんに報告みたいな感じで昨日のことを話すと、とても嬉しそうに返事をくれた。
「あの……ホンマにエエんやろな?」
「何度も聞かないでください。秋奈が幸せなら、君に渡してもいいと言ってるでしょう?」
そりゃそうなんやけど……
「倖せにしてあげてください、私は一足先に“倖せ”になってますから」
「! ああ、勿論や」
白いスーツを着るお兄さんにそう返事をし、俺は個室を後にする。
もうすぐ式が始まるっちゅう大事な時に呼び出されていたワケ。
「そうそう、秋奈を泣かせるようなことをしたら……命はないと思ってくださいね?」
「あの、それをニッコリスマイルで言わんといてください」
「おやおや、これは失礼」
(お兄さんが言うと、シャレにならんもん……)
これからの俺らは、同じ道を歩むことになる。
道の先で待ち構えている物はなんなのか、分らんけれど……
俺らなら大丈夫や!
バックで支えてくれる親友やお兄さんたちがいるからな!
END