最終章
*秋奈Side*
「タマちゃ〜ん!」
「秋奈ちゃん、良かった〜。来てくれるか心配したんだから……」
約束の日曜日がやってきた。
天気は快晴で、遊園地日和! そして、兄さんたちの結婚式を明日へと控えた、大事な日でもあった。
そんな日に遊びに行っても良いものだろうか。兄さんたちと話をたくさんした方がいいんじゃないだろうか?
そんなことを言ったら、兄さんたちは綺麗に笑顔を作って首を振った。
『秋奈は、友達と楽しんできなさい』
そう言われて、家を出てきたのだった。
「おっせーんだよ! 赤屍」
「あ、鈴鹿君」
タマちゃんの横には、オレンジ色のノースリーブを着こなしている鈴鹿君が立っていた。
流石スポーツマン。腕もがっしりしていて、とても男らしいです。
「おっと、ヒロイン遅れて登場! やな?」
「き、姫条君!?」
まさかの登場だった。だって、鈴鹿君の隣には嬉しそうに笑う姫条君が立っているんだもの。
彼も、タマちゃんに誘われてこの遊園地に来たのかな……
「メンバーも揃ったし、早く入ろうよ」
「う、うん!」
タマちゃんに腕をひかれながら、私たち四人は遊園地のゲートをくぐった。
「どこから行こうかな……?」
「やっぱり、遊園地の定番はジェットコースターって聞くよ。あ、でも最近できたバンジージャンプも良いってさ。あと、お化け屋敷もこの時期限定で運営中だって。はばたきネットに載ってたよ」
「本当? じゃあ、行きたい場所の候補、多くなるね」
タマちゃんとそんな話をしながら盛り上がる横で、男性陣二人も何かを話して盛り上がっていた。
そして、コソッと私の耳元でタマちゃんは言った。
「あのね、ここのアトラクションのほとんどはペアでないと参加できないの。誰と一緒に乗りたい?」
「え……?」
「私は……鈴鹿君と、行きたいな……」
ポソリと、呟くように話すタマちゃん。かろうじて聞こえたその言葉に、私はニッコリ笑顔を向ける。
「それじゃあ、私は姫条君と一緒に乗っていたいかな」
「! え、いいの……?」
「うん。だって、タマちゃんは気になるんでしょう? 鈴鹿君のこと」
そう問うと、ボフンッと小さく爆発するかのようにタマちゃんの顔は真っ赤になった。
そっか、タマちゃんは鈴鹿君に恋してるんだね。恋の応援なら、私にもできるよね?
「じゃ、決まり! 鈴鹿君、姫条君!」
「ん? なんや二人してコソコソと……隠し事はアカンでー?」
「ち、違うって……! 最初にアソコに行こうかなって話してただけだよ! ねえ?」
「う、うん」
なんとか誤魔化そうとタマちゃんは言葉を合わせてくれた。
そして、私たちがやってきた場所は……遊園地といえば最初にこれ! と言われているジェットコースターだ。
「あ、二列になってるんだ。じゃあ……」
「自分は俺とやで」
私の言葉をさえぎるように、姫条君は何故か私の腕を引っ張って長い階段を上って行った。
「え、あ、ちょ……ッ」
「なんや? もしかして鈴鹿と乗りたかったんか?」
眉間にしわを寄せて不機嫌そうな表情でそんな事を言われたら、首を横に振ることしかできないじゃない!
フルフルと首を振ると、子供のように姫条君は笑った。
「なら、エエやん」
その後も、バンジージャンプ・お化け屋敷・ゴーカートとたくさんアトラクションを回って行った。
流石にメリーゴーランドは行かなかったよ。
行こうって提案したら、男子二人が嫌そうな表情を浮かべていたからね。
笑ってしまったら鈴鹿に「バッカじゃねえの!」と怒鳴られてしまった。
嗚呼、恥ずかしんだよね。ゴメンゴメン……
そんなこんなで、あっという間に時は過ぎていった……
「じゃあ、最後はあれだね」
タマちゃんが指さす先には、大きな観覧車。
遊園地最後の締めくくりをアレにしようと言っているのだ。
「そうだね、観覧車も初めてだな……」
「秋奈ちゃんは何でも初めてなんやな」
「あったりまえだろ? 遊園地自体初めて来たって言ってる奴だぜ?」
「ほらほら、早く行こうよ」
タマちゃんに引っ張られながら、私は小さく小走りする。
あれで最後か、なんだか楽しすぎてあっという間だった。