九章
*姫条Side*
今日の夕方。帰り道は俺と秋奈ちゃんの二人きりの筈やった。
「あの、私たちも……いいの?」
「いいの! 急に誘って驚かせちゃったね。ごめんね」
「いいわよ。今日予備校お休みだし……」
「はい、わざわざ誘ってくださってありがとうございます」
秋奈ちゃんの提案で、今日のテスト終了を記念した食事会にいつものメンバーが集まったんや。
「あ、葉月君は嫌だったら途中で抜けていいからね。結構騒ぐだろうし」
「いや、別に…………」
「今日はゆっくりと休もうと思ったけど、君が誘ってくれたからね」
「わ、私は色サマが行くって聞いたから着ただけよ!」
守村、鈴鹿、三原、葉月……男性陣は一癖も二癖もあるメンバーやった。
紺野や有沢といった女子も同様やけど。
「こうみるとさ、秋奈って結構友達いたんだね」
「一歩間違えれば酷い言葉になりかねないよ、なつみん……」
「そ、そうだけどさ〜〜」
「でもね、私も改めて実感したよ。こうして集まるような事していなかったからかな」
「あ! それ言えてる!」
んで、一番気になるんは……
「あの、何で先生もいるんですか?」
「生徒の飲酒を避けるためだ。喫茶店とは言え、お酒も取り扱っているところなのだろう?」
「あ、はい。でもそこは店長が気にしてくれるかと……」
そう、あのヒムロっちがいるんや。何で!?
「あ、到着です!」
ワイワイガヤガヤしながら喫茶店の前に到着した。
扉を開けると……
―パンパンパンッ!!
「わッ!」
「仲直り記念とテストお疲れ様〜〜!」
「待ってましたよ、秋奈さん」
店に入ると同時に鳴り響くクラッカー音。
店の外にいた俺らは驚いて目を点にしてしもたんや。
「お、今日はいっぱいいるな〜」
タバコを咥えていつものように新聞を広げているマスターがニカッと笑いながら話してくれる。
「マスター、今日は宜しゅう」
「お、姫条君。ということは、このメンツは姫条君の知り合いさんでいいんだね?」
「はい、大人数になってしまいましたが……良いですよね?」
「ああ、費用は全部君のお兄さん持ちだけどな」
「えええ!!?」
目を丸くして驚きの声を上げる秋奈ちゃん。まさか、自分が払う気でいたんか!?
流石にこの大人数やし、どんだけ値段が弾むか分からんっちゅうのに……
「嗚呼、秋奈の友達全員集合ですか?」
「今夜は賑やかだね」
お、後ろの方からお兄さんとハルさんの声が聞こえてきたな。
「初めまして、今日はゆっくりして行ってね」
「あ、あの……はい」
「ほら、ここで立っているのも難ですから早く奥へ入りましょう」
大人二人に誘導され、俺らは店の奥へと足を運ばせた。
特に座る場所とか決めておらんから、ジャンケンしてペアで座ることとなった。
守村と有沢、三原と須藤、鈴鹿と紺野。
そして、俺は秋奈ちゃん……ってかなりできた話やな。
「それでは、テスト終了と秋奈ちゃんと藤井さんの仲直りを祝して……」
「「「かんぱーーーい!!」」」
その後、藤井と秋奈ちゃんは「何で喧嘩をしていたのか」っちゅう質問攻めに遭ったのは言うまでもないわな。
なんとか誤魔化そうと二人揃って必死になって……そんな姿が微笑ましかった。
ヒムロっちはというと、お兄さんと仲良くお酒を交えて談笑をしているようやった。
アンドロイド説で有名なヒムロっちも、笑うんやな。……あ、本人に対して失礼やったな。
無事に悩みも解決され、俺も心の底から笑った。
途中でやってきた蛮さんたちも交えて、今夜の喫茶店は大いに盛り上がったのだった。