九章
*秋奈Side*
いよいよ、テスト最終日の土曜日がやってきた。
この日は、午前中にテストを受けて午後に試験結果が張り出されるのだ。
なので、一日授業という形になる。
「よしッ」
最終科目は技術家庭。テストが終わったと同時に、私はグッと握り拳を作ってそう言った。
今回のテストも、なんとか上位を保てそうだ。
「秋奈〜!」
「あ、なつみん!」
「ねえ、今から大丈夫?」
「勿論!」
テストが終わったら話がある。
そうテスト初日に言われて数日。今日なんだ。
お互いの想いを打ち明けて、決着をつける日。
「場所、何処にする?」
「んー、屋上とかどう? 教室とかだと人多いし」
「賛成!」
廊下ですれ違った姫条君と鈴鹿君に挨拶を交わし、私達は駆け足で屋上へと向かう。
「廊下は走るんじゃない!」
って、先生に怒られたけれどそんなのお構いなし!
だって、今のこの時間が一番大事なんだもん……
そんなこんなでやってきた屋上には、ほとんど人がいなかった。
しばらく、気まずい空気が流れる……
「私ね、姫条の事が好きだよ」
どう声をかければいいのか分からない時、最初に切り出したのはなつみんだった。
「ずっと前から好きでさ、喧嘩友達っていう認識を変えられればいいって思ってたの。でも、途中から来た秋奈に取られちゃった……」
「なつみん……?」
「私ね、姫条も好きだけど秋奈のこともすっごく好きなの! だから私、宣言します!」
バッと片手を上げるなつみん。私はビクッと反応しながら口を閉ざした。
「私、藤井奈津美はライバル宣言を撤回します!」
「え―――」
「あーもう、私って結構お人よしだよね〜。私が手を引いたからには、ちゃんとくっ付きなさいよ!」
「う、うん……」
どう答えればいいのか分からないから、思わず頷いてしまった。
「あともう一押しなんだからね! 頑張りなさいよ!」
「え、あ……じゃあいつも通りに、戻れるの?」
「モッチロン! また雑誌広げてさ、流行の話で盛り上がろうよ」
その時のなつみんの顔が、あまりにも明るくて……綺麗で……思わず涙を流しちゃったんだ。
「ちょ、どうしたの!?」
「あ、ゴメンね……なんか、ホッとしちゃってさ」
仲直り、出来た。
今までできなかったことだったから……尚更嬉しくて、涙を流してしまった。
これからもよろしくね、なつみん。
「さ、早く廊下に行こう! 順位表貼られてるはずだしね」
「うん!」
お互い手を握り合い、校内へと入って行く。
これから先も、私達の友情は不滅……だよね。