*Side サクラ*

長い長い授業も過ぎていき、今はお昼。


「あれ? 今日も部活?」


パコッと弁当箱のふたを開ける友達に、私は両手を合わせた。


「そうなの、ゴメンね。今日も一緒にお昼食べられなくて……」

「いいよいいよ、サクラは吹奏楽部のエースって言われてるんだし。練習しなきゃ先輩や後輩に示しがつかないもんね」

「まーね」


弁当が綺麗に包まれた巾着とフルートの入った楽器ケースを持ち、椅子から立ち上がる。


「明日は大丈夫だから、一緒にお昼食べようね」

「もっちろん!」


友達に見送られながら、私は教室から飛び出す。お昼時なのか、廊下にはたくさんの人で溢れ返っていた。


「おっ、坂内さんじゃん」

「可愛いな〜〜」

「今日の吹奏楽部って、昼練らしいぜ。こっそり聴きに行こうぜ」

「賛成! こっそりと、だからな」

「わーってる!」


コソコソと、早歩きで過ぎていく廊下で聞こえてくる小さな話声。最近、こういう話を耳にすることが多くなったな……なんでだろう?

内容は私の事らしいけれど、なんか噂になるようなことしたかな……思い当たる節が見つかる訳がなく、私は慌てながら音楽室へと向かった。



こうして、私の新たな一年が始まった。



この一年が、私の周りを大きく変えていくことも知らずに……


 



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