ミナフの独り言


自分の残された時間に気がついてしまった俺の話
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(あぁ、嫌なことに気がつくのはいつも俺が最初だ。)
体が上手く動かせなくなったのはいつからだったろうか。
ふとした瞬間、自分の体に違和感を覚える。
例えば、食事中、文字を書いている時、あいつらと話している時。
最初はただの気のせいだと思った。
が、どうやら違うらしい。
別れの日は近い、俺の体は限界みたいだ。

あいつらのために何をしよう、あいつらのために何が出来るか?
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気がついた時には遅すぎた。
元々、戦闘兵器として造られた体だ。命令を聞かなかった保険の際に寿命は短くされていたらしい。
さらに俺は失敗作だ。尚更短いのだろうな。
サフランもフーも俺に気が付いたら泣き叫んでしまう。
気付かれないように、2人のために。
これから先出来ればまだ3人で笑っていられる日々が続きますように。

俺に出来ることは祈るくらいだな。
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いつものように3人で馬鹿騒ぎした夜。二人が寝た後俺はそっと部屋を抜け出して外に出た。
(あいつらがいつもと変わらないのが唯一の救いか。)
俺にとって2人は希望そのものだ、2人が幸せなら俺はいなくたっていい。
ただ、俺がいないと2人が幸せでないのなら。
冷たい夜風が体を通り抜けていく。寒すぎるくらいだが今の俺にはちょうどいい。思考を冷静に保つことができるから。
(次は3人でどこに行こうか。)
俺がいなくなるまでの間たくさん思い出を作っておかなくちゃならない。思い出だけで2人は生きていけるんだろうか。
「……先を考えていても仕方がないか。」
部屋に戻ろうと歩き出したその時だった。
「なーーに考えてたんだよ。」
聞き間違うはずもない声。驚いて振り返ったその先には当然のようにあいつの姿が。

「……サフラン。」
「こーんな真夜中にどっか行くから着いてきちまったぜ。」
「…そうか」
「何してたんだ?」
いつもと変わらない明るい声。しかし、俺を見つめるその顔はいつもと違う真剣な表情をしていた。
「……少し熱を冷まそうとしただけだ。お前らといるとすぐ熱くなるからな。」
「…そーかよ。」
「…あぁ。」
俺の返答に表情を顰めるサフラン。きっと納得出来ない返答だったのだろう。
「…お前何か隠してないか?」
「……まさか」
こういう時のこいつは勘が鋭い。普段は鈍感だというのに。
「ほんとか?」
俺と同じ赤い目を細めながら、俺に詰め寄る。
夜に融けて消えそうな紫の髪を揺らしながら近づいて来る。
「本当だよ。お前に隠したって仕方ないだろ?」
俺はこいつと距離を取るため後退りしながらそう返した。我ながら呆れる。隠し事だらけでよくこの台詞を言えたものだ。
「……そっか、そーだよな。」
少し悲しげに笑みを浮かべ頷くサフラン。やはり納得はいってないのだろう。あの頷きも恐らく自分に言い聞かせているようなもの。それくらいは俺にだってわかる。
(悪いな、サフラン。)
俺には心の中で謝ることしか出来なかった。


「……帰ろうぜ、ここさみーしよ。」
「…あぁ、そろそろ戻るか。フーも来たら面倒だ。」
「確かにな!あいつが起きる前に戻ろうぜ。」
いつもの明るさに戻ったようにサフランは笑って歩き出す。俺はその後ろに続いた。
「……」
「……」
「…なぁ、」
振り返りもせず俺に声をかける。
俺はそれに返事をする。
「…なんだ?」
「……やっぱ何でもねぇ。」
「……そうか。」
「おう。」

月が綺麗な夜だった。

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結局あいつはオレ達に何も伝えないまま逝った。
いつものように馬鹿騒ぎした夜、いつものように笑っていたあいつ、笑ってたオレ達。
黙ってたら気付かないとでも思われていたんだろうか。それだけが少し残念だ。
最後の最期まであいつは一度も苦しげな表情を浮かべなかった。最期までミナフのままだった。

なぁ、ミナフ。お前どんだけオレ達のこと大切に想ってたんだよ。
オレ達だって同じくらいお前のこと大切だって想ってたのに。
馬鹿野郎。




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